スプートニクはこの決議について国際的な活動家数名に見解をたずねた。ジャーナリズム分野で世界43カ国の68の団体および労働組合を束ねる欧州ジャーナリスト連盟(European Federation of Journalists)のリカルド・ギュチエレズ事務総長は次のように語っている。
「欧州ジャーナリストを代表する最大の組織である欧州ジャーナリスト連盟にこの文書に関して一切の懇談がなかった事実に驚いている。最悪の場合、我々は草案者らに決議案の不適切な箇所、あるいは間違いを指摘することができたはずだ。
この文書は冷戦あるいは新たな冷戦に典型的なもので、一方の側のマスコミ、ジャーナリストらはよくて、反対側は全部プロパガンダだと決め付けるものだ。話の内容はもっと込み入っており、より多くのニュアンスが求められるものであることははっきりしている。
さてその結果だが、まずこれは法的決議ではないため、誰に対しても一切の法的拘束力はもっていない。このほかにも私を安堵させてくれるのは賛成票を投じたのが議会の過半数ではなかったということだ。」
次にスプートニクがマイクを向けたのは有名なユーゴスラビア人映画監督のエミール・クストリッツァ氏だ。
「RTとスプートニクをプロパガンダを行なったとして非難するっていうのはピノキオが自分を作った人間を嘘つきだって非難するのと同じだ。この2つの誕生したばかりで、しかも質の良いマスコミをダーイシュと比較するというアイデアに足りないのは、今までも言われてきたことだが、ダーイシュを生み出したのは一体誰なんだ、西なのか、東なのか、それとも確固とした組織なのかっていうことだろう?
米国の政治学の「ユーラシア・センター」のアール・ラスムセン副会長の見解は次のようなものだった。
「ロシアのマスコミの行為を非難する前に西側エリートと西のメインストリームメディアは自分を批判的視線で見つめるべきだ。採択された決議は非常に危険であり、極めて悪い環境を作る方向へ仕向けるものだと思う。
欧州政府のトップはあまりに危険な道に乗り出した。彼らは内部にかなり多くの問題を抱えており、パニック状態にある。だから自分の問題をなすりつける仮想の敵が必要なのだ。 その敵役を一貫して担わされてきたのがソ連だった。
この決議でもって彼らは自分の領域で絶対的な検閲を行なうことを保証している。彼らは『私たちはあなたがたを正しくないニュースから守りますよ』と約束したがっている。だが実際のところは、それとは正反対の誤った方向に進んでいるのだ。」
イタリア人のフリーの時事評論家でインターネットポーター「パンドラTV」を率いるジュリエット・キエザ氏もロシアのマスコミを「ダーイシュ」と同視するとは反ロシア・マニアも甚だしいとして、次のように語っている。
「欧州議会が採択した決議とはロシアのマスコミを欧州諸国の主権を脅かす存在と規定するものだ。欧州議会の大半の議員らが依然としてロシアをどうしても和解しあえない敵だと捉えていることは間違いない。
だが決議に反対票を投じた人、棄権した人を合わせるとその数は賛成した人よりも多い。これには、このままロシアへの攻撃政策を続けるか、それとも止めてしまうか、判断がつきかねるEUのぐらつき加減は見え見えだ。
多くの議員が待機態勢にあり、いまやどちらに風がたなびくことになるか分かっていないことは明白。特に、突如トランプ氏が大統領に選ばれてしまったワシントンからの風の方角が読めない。ところが今問題なのは、ロシアと闘争をするには自由な報道に関係する欧州の基礎原則を侵さざるをえなくなるだろうということなのだ。」
最後にベネズエラのTV「テレスル」を創始したメディア専門家のアラム・アロニャン氏の視点をご紹介したい。
「これはつまり、『スプートニク』が見事な仕事をしたということだ。『スプートニク』は欧州議会のメンバーの注意を惹いた。欧州議会は欧州で実際起きていることをリアルに伝えたものはすべて自分たちの権限に害をもたらすと考えているからだ。欧州議会はイデオロギー的に自分らを擁護しようと必死だ。この決議が映し出したものは、一極的思考にとって最も恐るべき、代替的な見解を抹殺したいという願望の現われである。」