「交渉の中心テーマは平和条約締結の条件と領土問題の解決となる。だが交渉はあらゆる方向性について行なわれるだろう。軍事政治対話の枠内ではロシアの沿岸ミサイル複合『バル』と『バスチオン』についても、日本のTHAAD国内配備の可能性についても話が及ぶ可能性は十分ある。
妥協に達するために双方はそれぞれの計画を修正するとおもう。日本は購入する兵器の数、その型、展開の場所をいじるだろう。ロシアも譲歩として『バスチオン』を取り除くかもしれないが、それには日本の側に何らかのそれと同等な行動がなければ成り立たないだろう。
このため双方とも日本での交渉の前に自分のポジション固めを行い、独自の交換のための可能性を作ろうとするだろう。我々が目にしているのは今のところ交渉プロセスの形成にすぎない。」
アナリストの間ではまさに2島にミサイル複合を配備したということに政治的な暗示がこめられているとする見解が挙げられている。つまりこの2島はロシアのものだが、シコタン(色丹)とハボマイ(歯舞)は日本との妥協の対象になりうるという示唆だ。これについて歴史家で日本専門家のアナトーリー・コーシキン氏にマイクを向けてみた。
「抑止戦力として防衛システム『バスチオン』と『バル』をイトゥルプ、クナシル両島へ配備するという話はすでに今年3月の時点でショイグ国防相が明らかにしていた。このため、ロシア指導部がまさにこの配備によって安倍首相との交渉を前に自分のポジションを固めているというのは、私は根拠に欠けた話だと思う。
一方で日本領内へのMD配備は朝鮮民主主義人民共和国の核ミサイルの脅威に対抗するために必要だと説明されているが、この米国のMDはロシアのミサイルシステムに対しても同様の効果を発揮するために用いられうるではないか。
たしかに双方とも、ミサイルというテーマは12月のプーチン・安倍会談には影響しないと確証しているが、これで対立の要素がさらに増やされたことになる。このため実際はこの要素によって両国の国境線画定の合意はさらに複雑化する恐れがある。」
「日本がすでに艦対空ミサイル『SM-3』や防空用ミサイル『パトリオット-3』を保有していることは知られている。もしこの国の領域にさらに『THAAD』のようなミサイル複合が配備されたら、日本は高度、中度、低空用迎撃ミサイルを有したMDを所有することになってしまう。
来月、日本の専門家らがこうした問題を討議するため訪米することになっている。こうした行動が発しているシグナルは、日本は日米韓の間の軍事同盟を創設することに力を集結しているというものだ。こんにち、日韓政府はすでに諜報データーの交換条約を締結しており、これを米国も歓迎している。
こうして朝鮮民主主義人民共和国からの核の脅威という前提のもとに日本はTHAADを配備し、軍備の刷新を図るのであれば、北東アジアの地政学的安定を脅かし、将来この地域での軍拡競争を煽動することになりかねない。」