アスモロフ氏「最近北朝鮮へ行ったが、これまでの制裁の効果は感じなかった。むしろ北朝鮮の生活水準は成長している。北朝鮮に対する制裁強化は、真の経済封鎖ということでもない限り、影響を与えない。しかし、そこまでするともはや制裁ではなく、北朝鮮の政権を破壊する試みとなる。単なる制裁は効果をもたらさないばかりか、朝鮮半島情勢のさらなる不安定化を招きかねない。私は、ロシアも核大国および安保理の常任理事国として、国連という構造の利益を保護すべきであると考えている。つまり、新たな決議は北朝鮮の責任感を高めるためのものだ。」
今回の制裁は前例のない長時間の準備を要した。モスクワ国立国際関係大学のグリゴーリイ・トロラヤ教授は、米国がロシアの利益を無視して、自分にだけ都合のよい結果を出そうと一方的な姿勢を示したため、ここまで決定が遅れたとみている。
トロラヤ氏「ロシアが新たな制裁措置の採択を急がず、あらゆる負の帰結を勘案しようとしたことは、絶対的に正しかった。ハサン・羅津(ラジン)プロジェクトを除き露朝共同プロジェクトが全面停滞してしまった前回のようにならないように、慎重に制裁にアプローチしたのだ。なお、ハサン・羅津(ラジン)プロジェクトは制裁のせいでマイナスになってはいるが、前に進んでいる。前回の制裁決議は、急いで採択されたが、特に尊重されなかった。例えば、中国は北朝鮮からの石炭輸入を止めず、むしろ拡大した。今回の決議に米国が盛り込もうとしていたものの大部分は、ロシアと中国が一緒に拒否することができた。例えば、ロシアにとっては、北朝鮮の労働力の使用を禁止する問題を議論することが重要だった。こんにち、多くの北朝鮮人がロシア極東で働き、北朝鮮の基準からすると良い給料を受け取っている。彼らが国に税金の一部を入れていることは明らかだ。」
韓国国立・統一研究院のチョ・ハンブン研究員は、この制裁によって北朝鮮は自らの核開発路線を見直さないといけなくなる、と予想し「これまでの国際社会の、北の核開発に対する制裁は、北朝鮮に貿易不振をもたらしてきた。今まで何とか海外で稼いだ外貨でマイナスを補填してきたが、今回の制裁は金正恩政権にとって大きな打撃となるだろう」と述べている。
また、韓国人専門家の中には、制裁内容と実態との乖離を指摘する声もある。ハンドン・グローバル大学のパク・ウォンゴン教授は、「中国が、いくら対話のテーブルに戻ろうと声高に呼びかけてみても、中国と北朝鮮との間の地下貿易は途切れてはいないし、両者の貿易高はこの10月に増加すらした。新しい制裁の採択はむしろ、中国の密輸に対する取り締まりの熱意をますます下げてしまうのではないか」と懸念を見せる。
日本の専門家の意見はどうか。拓殖大学大学院の武貞秀士特任教授は、今回の制裁は北朝鮮の核開発に影響を及ぼさないという見方を示している。
武貞氏「北朝鮮は核戦略に基づいて核兵器開発をしており、窮乏しても核抑止力を完成するために核開発を続けるだろう。制裁の目的は、北朝鮮の核兵器開発を断念させることだが、制裁は9月中にすべきだった。核実験は9月9日だったのだから、これでは制裁決定のタイミングが遅すぎる。また、北朝鮮の水害被害の復旧支援に国際赤十字が乗り出しつつある時期の制裁は、非常にタイミングが悪い。」
武貞氏は北朝鮮経済について「石炭輸出量が減ることは間違いない。石炭輸出量の上限を定めるという制裁は経済に影響をもたらすし、現時点でも既に、北朝鮮経済は国連制裁の影響を受けている。北朝鮮の経済成長は、昨年はマイナス成長に転じていた。しかし中国の地方レベル(吉林省・遼寧省)の輸出入まで、中国の中央政府の権限が及ぶのかどうかは不明だ」と指摘している。
また武貞氏は拉致問題について、日本は拉致問題解決の協議は、継続したいという姿勢であり、今回の制裁はタイミングが悪かったものの、これにより日本の対北交渉力が低下することはなく、対北交渉条件が悪化するとも思わない、と述べている。