新たな喫煙対策コンセプトの策定に携わった専門家は、こうした対策でもまだ不十分だと考えている。というのも、ロシア保健省によると、就業可能年齢のうち、喫煙による早期死亡によって失われる寿命は、男性で平均9年、女性で平均5.6年にのぼるからである。専門家によると、ロシアでは死亡数の17%以上が喫煙に関係しているという。金額にすると、喫煙の結果による逸失利益はGDPの約2%にのぼる。現在ロシアが直面する複雑な人口問題を考えると、絶対に許されない状況である。ロシア保健省たばこ規制協議会のメンバーであるヴィクトル・ズィコフ氏は、新規対策により「2033年には、喫煙が過去の遺物として、また、時代遅れの不合理な悪癖として捉えられるようになる」と期待している。だからこそ新コンセプトの変更点は若者の喫煙防止に焦点を当てているのである。たばこ依存症から脱却する方が、喫煙を防止するよりも困難だからだ。
世界の統計によると、喫煙者が最も多く集中しているのが東欧、北アフリカ、アジアである。ユーラシア圏ではロシアがつい最近まで最上位にあり、喫煙率は39%であった。調査によると、2016年は成人人口に占める喫煙者の割合が33%に減少している。新コンセプトは2025年までに喫煙率を25%に減少させることを見込んでいる。ロシア国内では新コンセプトに対する評価がまだ割れているが、ロシアの隣国においてさえも、厳しいたばこ規制対策はその有効性を立証している。
日本は先進国の中でも、たばこ規制の開始が最も遅かった国のひとつである。それもそのはずだ。たばこ産業は1985年まで国の専売事業だったのである。日本ではまだ、たばこロビーが強いものの、たばこに対する規制は進められている。最新のマスコミ報道によると、日本では2020年の五輪開始までに、レストランでの喫煙が全面禁止になるという。2009年からは職場や公共施設での喫煙が禁止されており、その後、道路での喫煙も禁止された。また、日本では20歳未満へのたばこの販売が禁止されている。2010年末にはすべてのたばこ製品が3割値上がりし、各都道府県は次々にレクリエ-ションゾーンでの喫煙を禁止した。一連の企業では、非喫煙者に対してボーナスの上乗せが行われている。こうした対策は世界的に見れば、決して厳しいとは言えないものの、それでも成果を出している:現在の日本の喫煙率はわずか19%である。それでも。男性の喫煙率はかなり高く、29%にのぼる。
興味深いことに、世界で最も厳しいたばこ規制を行っているのがブータン王国である。この国では公共施設での喫煙は数世紀前にすでに禁止されており、2004年にはたばこの販売も禁止された。たばこの密輸が疑われる者に対しては、警察が令状や事前警告なしに家宅捜索に入ることができる。ブータン国民がたばこを購入できる唯一のチャンスは、外国に買いに行くことである。国内に持ち込めるのは200本までで、100%の関税を支払わなければならない。この規則は外国人観光客には適用されないが、外国人観光客が地元住民にたばこをあげた場合、両者ともに多額の罰金が科される。とはいえ、この厳しい対策はどちらかというと、国民の健康をおもんばかっているというよりは、喫煙によってカルマが著しく悪化するという仏教の教えに起因したものである。