TPP加盟国がこの米国離脱の可能性に示した反応はさまざま。ベトナムは批准プロセスを12月に一時停止した。ニュージーランドのイングリッシュ首相は米国離脱となれば加盟国のそれぞれと交渉をしなおすことになるが、だからといってそれがTPP破綻を意味するわけではないとの見解を示した。シンガポールのストレイツ・タイムズ紙が報じた同国のリ・シャン首相の声明では、TPP合意は「この地域の安定と繁栄に大きく貢献したはずだが、これをわれわれが反故にしたとしても生活は続いていく。だがわれわれは一種非常に貴重なものを、有する価値のあったはずのものを失うことになる」と指摘されている。
TPP破棄への非常に大きな憂慮を表しているのは日本だ。安倍首相はTPPに大きな期待をかけていた。こうなった今、一刻も早くトランプ氏と会談し、状況を救おうとするだろう。安倍首相は23日の国会での演説で「大統領も自由で公正な貿易の重要性については認識していると考えており、戦略的、経済的意義についても腰を据えて理解を求めていきたい」と語っている。
ロシア科学アカデミー世界経済国際関係大学、経済論理部部長、セルゲイ・アフォンツェフ教授はこれだけ長期で入念な交渉の結果が跡形もなく消えてなくなるはずはないと指摘する一方で米国の参加なしに何かがうまくいくという保障もあまりないとして次のように語っている。
ところが日本の米輸入自由化で一番の利益を得るのはベトナムだ。仮に米国が日本を拒んだとする。と日本は『われわれはベトナム産のコメのために市場を開く必要があるのか?』と尋ねるだろう。
前提的な分析のなかでさえ、米国がもし離脱した場合、多くの国は義務、弁償を抱えることになることは示されている。そうした弁償は本来であればその国は米国からもらうか、または米国が譲歩をした相手国からもらえるはずのものだった。米国が離脱した後、こうした義務が意味を失うのは明白だ。このため頭を切り取られたようなスタッフ構成でパートナー関係を維持するためには残された加盟国どうしの間で何度も交渉を行う必要がでてくるだろう。
現段階ではこうした側は一種の茫然とした状態にあり、米国に考え直すようシグナルを送ろうとしているのがわかる。だがトランプ氏がこうした類のシグナルを自国の立場を変える理由として受け止めるかどうかは私にははっきりわからない。仮に彼の立場が変わったとしてもそれは諸外国からの圧力に負けてそうなるわけではなく、米国実業界の影響によるものだ。」
ロシアAPEC調査センターのタチヤナ・フレゴントヴァ所長はスプートニクからのインタビューに対して次のように語っている。
「米国の批准なしの合意は形式的に発効できない。非公式的な情報で私が知るかぎりでは合意実現に関心のある諸国は合意が日の目を見られるように力をつくす。だがトランプ氏の政策に影響を与えることができるかどうかは、解決されていない。
それからWTOの枠内で見直しが提案されるかもしれない。これが決定されれば必須の性格を持つことになる。TPP離脱から損害を蒙るのは米巨大ビジネス、付加価格、つまり国際的な労働分割のチェーンに入ってしまっている企業らもそうなる危険性がある。中国もイニシアチブを引き受けた場合、損をするかもしれない。それでも私はTPPと東アジア地域包括的経済連携が互いに反するものだとは思わない。このふたつは多くの議題が交差している。問題は義務がどこまで求められるか、だ。」
加えて米国のTPP離脱はこの地域での米国の評判をある程度損ね、アジア太平洋地域における役割を放棄したことを意味してしまう。こうなるとそれは中国へと渡されることになるだろう。