安倍首相、「米国車が日本で売れないのは米メーカーのせい」と言えるか?

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7日、米商務省は2016年の貿易収支を発表した。日本に対する赤字は689億3800万ドルで昨年並みだったが、日本からの乗用車の輸入額が大幅に伸びたことがわかった。米国は日本からの自動車輸入に対して2.5パーセントの関税をかけているが、それでも日本車がよく売れているのだ。

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自動車業界に詳しい佃モビリティ総研の佃義夫(つくだ・よしお)代表は「日本から米国に輸出されているのは高級車やハイブリッド車といった付加価値の高い車で、ガソリン安の影響もあって売れ行き好調です。年間で日本からの輸入が約190万台、米国での現地生産が約400万台、合わせて日本車が600万台弱売れている計算になります。これは米国新車市場の約4割のシェアを占めています」と話す。

現地生産の台数が多いのには理由がある。オイルショック後の日米自動車摩擦により、日本車対米輸出自主規制は1981年からおよそ13年続いた。この間日本の自動車メーカーはホンダを皮切りに、米国で生産販売する現地化シフトを進めざるを得なかった。この努力が実り、ブランドとして定着したのである。露・世界経済国際関係研究所のエコノミスト、エレーナ・レオンティワ氏も「乗用車で言えばアメリカ車より日本車のほうがよく売れています。日本車工場はデトロイトのよきライバルであり、これは日本企業が今まで米国で行ってきたことの成果」と話す。また佃氏によれば、日本の自動車メーカーは米国に工場を構えることで、約150万人もの雇用を生み出している。2日、トヨタの豊田章男社長は「我々もアメリカメーカーの一つだと理解いただきたい」と発言したが、これは日本の業界の声を代弁したものだろう。

その一方、トランプ米大統領は日本で米国車が売れていないことに対して「不公平」「日本市場は閉鎖的」と批判している。現に2016年の、米国から日本への自動車輸入は5億1800万ドルにとどまった。日本から米国へ輸出した乗用車の金額は392億6100万ドルだったので、その差75倍以上だ。佃氏は、「日本で米国車が売れない理由は企業努力が足りないから。日本は自動車輸入関税もなく、障壁はない」と指摘する。

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佃氏「トランプ大統領があえてあのような強引な言い方で批判しているのか、状況が本質的に見えていないのかはわかりません。ドイツ車など輸入車市場が伸びているのに日本人が米国車を選ばないのは、米メーカーの日本市場に対する戦略意欲が低いからです。フォードは昨年いっぱいで日本事業から撤退しましたし、GMは日本の道路に合う右ハンドル車を導入していません。日本は国産メーカーだけでも12社あり、世界一の激戦市場とも言われています。このグローバル時代において、米メーカーは『選択と集中』で日本市場をあきらめ、世界一の市場である中国に意識を集中させているのです。」

日本の自動車産業にとって米国はドル箱市場だ。当初予定通りTPPが発効されていれば、利益はもっと大きくなったはずだ。ロシア高等経済学院・国際政治経済学部のアンドレイ・フェシュン准教授は、日本の目論見が外れたことについて次のように話している。

フェシュン氏「日本はTPPで自国の農業を放棄する代わりに、自動車を関税なしで販売して巨大な利益を得るはずで、その販売先の筆頭は米国でした。そうした観点から言えば、安価な日本の自動車のために米市場を解放するという旧オバマ政権の政策は論理的ではなかったと思います。日本は既にトランプ政権の間にTPPが達成されないことを認識しており、別のバリエーションを模索する必要があると理解しています。」

9日夜、安倍首相はワシントンに向け出発した。10日の日米首脳会談では、過激で支離滅裂な日本車批判を繰り返すトランプ大統領に対し、安倍首相は正論で答えることができるのだろうか。

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