現地生産の台数が多いのには理由がある。オイルショック後の日米自動車摩擦により、日本車対米輸出自主規制は1981年からおよそ13年続いた。この間日本の自動車メーカーはホンダを皮切りに、米国で生産販売する現地化シフトを進めざるを得なかった。この努力が実り、ブランドとして定着したのである。露・世界経済国際関係研究所のエコノミスト、エレーナ・レオンティワ氏も「乗用車で言えばアメリカ車より日本車のほうがよく売れています。日本車工場はデトロイトのよきライバルであり、これは日本企業が今まで米国で行ってきたことの成果」と話す。また佃氏によれば、日本の自動車メーカーは米国に工場を構えることで、約150万人もの雇用を生み出している。2日、トヨタの豊田章男社長は「我々もアメリカメーカーの一つだと理解いただきたい」と発言したが、これは日本の業界の声を代弁したものだろう。
その一方、トランプ米大統領は日本で米国車が売れていないことに対して「不公平」「日本市場は閉鎖的」と批判している。現に2016年の、米国から日本への自動車輸入は5億1800万ドルにとどまった。日本から米国へ輸出した乗用車の金額は392億6100万ドルだったので、その差75倍以上だ。佃氏は、「日本で米国車が売れない理由は企業努力が足りないから。日本は自動車輸入関税もなく、障壁はない」と指摘する。
日本の自動車産業にとって米国はドル箱市場だ。当初予定通りTPPが発効されていれば、利益はもっと大きくなったはずだ。ロシア高等経済学院・国際政治経済学部のアンドレイ・フェシュン准教授は、日本の目論見が外れたことについて次のように話している。
フェシュン氏「日本はTPPで自国の農業を放棄する代わりに、自動車を関税なしで販売して巨大な利益を得るはずで、その販売先の筆頭は米国でした。そうした観点から言えば、安価な日本の自動車のために米市場を解放するという旧オバマ政権の政策は論理的ではなかったと思います。日本は既にトランプ政権の間にTPPが達成されないことを認識しており、別のバリエーションを模索する必要があると理解しています。」
9日夜、安倍首相はワシントンに向け出発した。10日の日米首脳会談では、過激で支離滅裂な日本車批判を繰り返すトランプ大統領に対し、安倍首相は正論で答えることができるのだろうか。