ボリショイ劇場のバックステージツアーを通して、ロシア芸術や舞台の魅力を広めている「Mavita」代表の山本萌生(やまもと・もえは)さんは、「パリの炎は、古典とは一味違う大胆なバレエ作品です。人の歴史と土臭いドラマが観たい方におすすめ」と話す。
山本さん「民衆がステップを踏みながら舞台上をジグザグに駆け抜ける躍動感は、革命を起こそうとする気持ちの高まりそのものです。途中で挿入される『ラ・マルセイエーズ』は、これが歴史の物語だということを改めて思い出させてくれます。さらに、主役を取り囲むダンサーたちの、活発で大胆なボリショイ・バレエらしい演技は、この時代を生きる人々をリアルに体現していて、否応なく観客を舞台に引き込んでいきます。『パリの炎』は、勝利の裏には必ず犠牲があるという非情なまでの普遍性を再現しています。ラストの衝撃は革命に伴う悲劇の象徴であり、愛であり、また勝利の証でもあるのです。」
会見にはマハール・ワジーエフ舞踊監督の他、ユリア・ステパノワ、デニス・ロヂキン、イーゴリ・ツヴィルコの3名のダンサーも同席した。マハール・ワジーエフ監督は、昨年までミラノ・スカラ座バレエで舞踊監督を務め、高く評価されていたが、ボリショイ劇場ウラジーミル・ウリン総裁の強い求めに応じてロシアへ戻り、ボリショイ・バレエの舞踊監督となった。
日本はバレエブームが長く続いており、海外に留学しダンサーとして活躍したいと夢を持つ若者が沢山いる。ボリショイのダンサーたちに、プロを目指す若い日本人へのアドバイスをリクエストしたところ、「何かを本当に得たいなら、それを信じて諦めないで努力し続けること。日本人ダンサーの特徴は、肉体的、精神的に辛くても、常に勤勉であること。その特徴をもち続ければ、夢は叶うはず」と話してくれた。
意外に思われるかもしれないが、良い席で観ることにこだわるとすると、日本公演はモスクワで鑑賞するよりも安価である。ボリショイ劇場のチケットはここ数年値上がりを続け、入手困難な状況が続いている。例えば(公式でないが)ボリショイ劇場のチケットを専門に販売するサイトを見てみると、3月半ばに行われる、ボリショイの看板スターであるザハーロワがメイン出演する「スヴェトラーナ・ザハーロワ アモーレ」の最も高いチケットは5万1300ルーブル(約10万円)。4月半ばに上演される「海賊」のS席で最も高価なチケットは4万500ルーブル(約8万円)。それと比較すると、日本公演はザハーロワが出演する日の最も高額なチケットで2万6000円なので、かなり良心的だと言える。もちろんボリショイ劇場という、劇場そのものが芸術作品である空間で鑑賞するバレエは別次元の素晴らしさではあるのだが、220名ものダンサーやスタッフが来日する公演で、この価格でチケットが買えるのは、かなりお得だと言えるだろう。
ジャパン・アーツの広報宣伝部長・寺沢光子さんは「今年は仙台でも公演を行います。ボリショイ・バレエは東日本大震災の翌年1月に来日し、多くのチャリティ活動をしてくださいました。それを思うと、今回、仙台で公演ができることは、とても意義深いと感じています」と話している。