この論文を書いたのは、米国科学者連盟原子力情報センター所長のハンス・クリステンセン氏や、ロケット技術の著名な専門家であるセオドア・ポストル氏、国家自然資源擁護評議会原子力プログラムの責任者マシュー・マッキンゼー氏など、米国を代表する軍事専門家グループである。彼らの意見によれば、観測筋は、2009年から米国が行った戦略兵器における真の革命を見逃してしまった、との事だ。そのため、ロシアあるいは中国の戦略軍に対する予防核攻撃の新しい可能性が生じた。
スプートニク記者は、ロシアの軍事専門家、CIS諸国研究所のウラジーミル・エフセーエフ副所長に、この論文に対するコメントをお願いした。
エフセーエフ氏は、次のように答えてくれた-
さて米国の専門家らは、核弾頭を首尾よく近代化できたことで、特別固く防御されている戦略施設を攻撃できる米国の力が高まったとみなしている。これはつまり、潜水艦発射弾道ミサイル、トライデントⅡに新型スーパー起爆装置システムであるMC4700が据え付けられた核弾頭を装備する事を言っている。このシステムの特徴は、標的上の低空で早期に弾頭を爆発させることで、「遠着」の撃ち損じを補う事ができる。それ以外に、潜水艦発射ミサイルの弾頭は今や、戦略施設から深く埋設されたサイロ型発射装置への核攻撃のために効果的に使用できる。」
エフセーエフはまた「現在は、あまりに多くのものが作られてしまったので、何らかの質的突破口を開くような優越性を手に入れるのは難しい」と指摘し、次のように続けた-
「中国については話すことはできないが、ロシアにおいては、すでにソ連時代に、同様の特別の爆破体制が完成されていた。それらは、非常によく防御された標的を攻撃する際に、核弾頭爆破を保証しつつ、成功裏に用いることができる。それゆえ、地中深くの施設(例えば司令部など)を攻撃する場合において、ロシアが劣っているとは思えないし、米国がすぐれていると言う事も出来ない。」
またエフセーエフ氏は「そうした点以外に、何らかの優越性を求める場合、そこには危険が付きまとう」と述べ、さらに次のように続けた-
論文「いかにして米国の核戦力近代化は、戦略的安定を台無しにするか」の著者達は、結局次のような結論に達している-「核の予防攻撃のために増大した米国のポテンシャルは、状況を不安定化させ、最も危険な状況を創り出しつつある」。
一方ロシア・CIS諸国研究所のウラジーミル・エフセーエフ副所長は「まず相手の武装を解除する目的でなされる先制攻撃」というものは、現実にはあり得ない、そう考えている。