会議招集のイニシアチブを取っているのは、核兵器を持たない一連の国々である。条約への参加を表明したのは113カ国で、40カ国がこの会議を無視してきた。米国や英国。フランスそしてロシアは、会議に断固反対する姿勢を明らかにし、その後、中国も会議への参加を拒否した。なお日本の高見沢将林(たかみざわのぶしげ)軍縮会議代表部大使も「日本は参加を控える」と述べている。
日本は、核兵器のない世界を目指すと宣言しているが、核兵器を所有する大国が参加しない、こうした会議は効果がないとみなした。一方岸田外相は、北朝鮮からの核の脅威が増大する条件下で、ニューヨークでの交渉は、核兵器のない世界作りを促さないばかりか、核保有国とそうでない国々の間の分断をさらに深める可能性があるとの考えを示した。
こうした日本政府の決定は、1945年に広島・長崎へ原爆が投下された経験を持つ日本人の間に批判や失望を呼び起こした。原爆の悲劇は、彼らにとって単なる歴史の一ページではない。NHKの取材に対し、長崎の田上 富久市長は、次のように述べた-「日本は、唯一の被爆国として、核兵器完全禁止を目指した討論の先頭に立つべきだ。私は、政府が6月に開かれる交渉の第二ラウンドに参加するよう希望する。」また核軍縮・不拡散議員連盟のメンバーとして会議に参加している日本共産党の志位 和夫委員長も、.日本政府が会議への参加を拒否したことに遺憾の意を示した。
スプートニク日本記者は、この問題に関しロシアの専門家に意見を聞いた。現代発展研究所のドミトリイ・ソロンニコフ所長は、次のように述べている-
「現在世界では、ますますポピュリズムが力を増し、規制が試みられている問題について十分によく分かっていない国際的な組織や団体が、ますます大きなイニシアチブを取るようになっている。他ならぬ核抑止のおかげで、もう50年以上も世界はグローバルな戦争に巻き込まれないですんでいる事が分からない、核抑止不参加国は、今度は、核兵器のない世界の方がいいのだという抽象的なスローガンを掲げて、核抑止プロセスの邪魔をしようとしている。しかしこれは、彼らが考えるような、そんなに単純な問題ではない。」
また国連軍縮会議の元事務局長で、国連事務次長をつとめた経験を持つ、セルゲイ・オルジョニキーゼ氏は、スプートニク日本のインタビューに応じた際、条約について「前途に未来のない思い付きだ」とし、次のように指摘した-
「この目論見は、私にはフルシチョフを思い起こさせる。彼は国連に、包括的完全軍縮の考えを持ち出した。あるいは核兵器のない世界という考えを持ち出した米国のオバマ前大統領のことも、頭に浮かぶ。主張は耳に美しく響くが、現実的である必要がある。核兵器は、客観的抑止力を保証し、それは結果として、グローバルな戦略的安定の支柱となる。このメカニズムを一晩で壊してしまおうという考えは、ユートピア的なものであり、国際的な安全保障を破壊するものだ。そもそも、核大国の参加なしに核分野で、何らかの決定を下そうとすることなど、ナンセンスである。現在核拡散防止条約によって、5カ国が所有する核兵器は、正当なものとされている。しかし新しい条約の中では、あらゆる核兵器は不法なものとされる見込みだ。そうした事は受け入れられないし、核大国のどの国も、その国の安全保障の諸問題が、その国の意見を考慮せずに、国連総会の投票で決められるなどという事を許さないだろう。もしそうした文書が採択されるなら、核保有国と非核保有国の間が分極化され、対立が強まり、そこからあらゆる大問題が生ずるに違いない。とりわけグローバルな性格を有する、あらゆる交渉や合意は、コンセンサスを基盤に築かれるべきで、その逆であってはならない。」