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東芝指導部が、WHの破産プランを大々的に発表したことが、嵐のような反響を呼んだことは指摘しておくべきだ。WHは、世界最大の核燃料供給企業であり(その割合は世界市場の31%を占め)、また世界の様々な国々にある何十もの原子力発電所や関連施設の安全を保障する業務を請け負う世界最大の企業である。燃料供給あるいは原発の安全の脅威について言えば、事は社会的に極めて重要な問題であり、こうした企業の破産は、世界的影響を及ぼす主要問題の一つになる。しかしマスメディアで流されるのは、破産手続きにより核燃料の供給に影響は出ないだろうといった、人々を安心させるようなものばかりだ。
ロシアの雑誌「ゲオエネルギチカ.RU」のボリス・マルツィンケヴィチ編集長は、自身の論文の中でWH破産の動機を分析し、それは当初から、破産を通じての原子力事業のある種の再編にあると見ている。
編集長の分析は、全く根拠のあるものだ。
東芝が。財政的困難に直面しているのは今に始まった事ではない。すでに2015年、12億ドルを粉飾決済するというスキャンダルがあった。これは明らかに、指導部がリスクのある戦略をとってきたことの帰結である。しかしWH問題は、東芝を完全にダメにしてしまう恐れがある。当初、破産手続きは、90億ドル規模の損失をもたらすと言われていた。当時の東芝の定款資本は、33億ドルである。それを考えれば破産手続きは東芝にとって「無用の長物を捨てる事」になる。会社を再び利益あるものとし売りに出すためには、膨大な赤字をもたらすような契約は廃棄しなくてはならない。
マルツィンケヴィチ編集長は、こうした東芝のやり方を皮肉を込めて、次のように指摘している-「破産の結果、我々が目の当たりにするは『成功せし腹切り2017』と言うべきものだろう。核燃料生産工場や原発用サービス設備生産工場などの誇り高い主人が、自ら腹を切る姿を見ることになる。一体誰が、そうしたものと知ったうえで、ホールディングを買収するだろうか?」
米国では実際、11条による破産は、大分以前から、不採算の資産や契約から自由になる試験済みの手段となった。例えば、2002年から米国のあらゆる大手航空会社は、この条項を通じて破産手続きをした。US Airwaysなどは、2002年から2004年の間に2度も破産手続きをしたほどである。そうして彼らは、従業員達と結んだ会社にとって利益の上がらない契約から免れたのである。
WHの破産手続きの過程では、まずジョージア州ヴォーグㇽ原発の第3、第4号炉、サウスカロライナ州V.C.サマー原発の第2、第3号炉、合計4基の原子炉建設を筆頭とした、不採算契約が破棄されるだろう。こうした4か所すべてには、出力1100MWのАР1000タイプの原子炉が設置されるはずとなっている。会社の基本的損失は、これに関するもので、原子炉4基建設の総額は、238億ドルに達する。ちなみに建設作業ばかりでなく機器の取り付けも、すでに始まっている。
とはいえ、この「成功せし腹切り2017」が、それでもやはり純粋な金融取引の枠をはるかに超え、政治的色合いを帯びることは、また別問題である。ヴォーグㇽ原発の2基の原子の建設は、明らかに、新たな原子力エネルギー産業発展における東芝指導部の大きな戦略の一部となっている。2007年に東芝は、米子会社の株の10%をカザフスタン国営企業「カズアトムプロム」に5億4千万ドルで売っている。2006年の東芝によるWH買収の際、この価格は7億ドルだった。しかし「カザアトムプロム」は、かなりのウランを採掘している(2016年は、2400トンでこれは世界全体の採掘量の39%だった)。東芝は、巨大で展望ある採掘量を持つ会社との連合が必要だったのだ。2008年4月に調印されたWHとGeorgia Power Companyとの間の契約は、1979年に起きた米スリーマイル島での事故の後、米国内における原発建設としては初めてのものとなった。米国での原発には、新型原子炉АР1000を使わなければならなかった。また4基のАР1000が、中国で建造された。さらには中国で9基、ブルガリアで1基、英国で3基、インドで6機の原子炉建造プランがある。そして全部で27もの原子炉プランがある。こうした拡張はやり過ぎではないのか? 結局現在、この壮大なプランは、明らかに終わりに近づいてように思われる。すでに建造が始まった原子炉ができれば、それでよいだろう。
これは、本質的に、米国にとっても日本にとっても、そしておそらくは欧米世界全体にとっても、新時代の原子力エネルギー市場に関する夢の崩壊を意味するものである。
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。