スプートニク日本
朝鮮半島への米国の対ミサイル防衛システム配備は、北朝鮮に対する米国のどのような強硬路線も、韓国政府は固く支持するに違いないと思われるものだったが、アジア太平洋における米国の主要な二つの同盟国の立場は、話が北に対する現実的な軍事力行使に及んだ場合、互いに相反するものとなった。
「事はすべて、距離の問題だ。北朝鮮が反撃した場合、韓国が負うリスクは、日本のそれよりはるかに大きい。韓国領に北朝鮮のミサイルが達するためには、たった60キロも飛べば十分だ。一方日本の場合は、1千キロ以上飛ぶことになる。そしてさらに、それが到達するかどうかわからない。それゆえ韓国政府が持つ懸念の方が高いのだ。この事は十分に理に適っている。北朝鮮への予防攻撃に関する日本と韓国の立場の違いは、日米韓の三国同盟が、すでにもう一枚岩でない事を示した。同盟には弱い部分もある。」
明らかに、米国によるシリアへのミサイル攻撃をめぐる情報アジテーションを背景に、トランプ氏は「決断力のある大統領」という自分のイメージを強化したいと欲した。彼は、国際舞台で許されている事のギリギリの線を模索し続けている。トランプ大統領は、北朝鮮問題を自主的に解決する用意があると述べ、空母「カールビンソン」を筆頭とする打撃群を北朝鮮へと派遣している。それ以外に、新聞Wall Street Journal,によれば、トランプ大統領は、中国の習近平国家主席に、米政府の軍備は、空母だけではないことを北朝鮮指導部に伝えるよう頼んだとの事だ。
オバマ前大統領時代、米国の支援により韓国は軍事力を拡大でき、北朝鮮へ同盟国と共に、事前の打ち合わせのない予測不可能な攻撃をするなどという心配はなかった。しかしトランプ現大統領の行動を予測するのは、事実上不可能だ。ロシア科学アカデミー極東研究所コリア調査センターのアレクサンドル・ジェビン所長は、スプートニク日本記者の取材に対し「もしトランプ大統領が、断固とした行動をとったなら、朝鮮半島全体にとって未曽有の大惨事がもたらされるだろう」と指摘し、次のように続けた-
「韓国内では、およそ30基の原子炉が稼働中だ。通常の爆弾や弾薬が使われた場合でも、いくつかの原子力発電所が破壊される可能性がある。そうなれば99平方キロというさほど広くない地域に、チェルノブィリ級の原発が5つから6つあるので、その地域は一瞬にして、誰も住めない場所に変わってしまうだろう。これは、同盟国に関する米国の懸念が完全に現実のものになることを示している。シリアでの最近の出来事を考慮するならば、朝鮮半島で米国が、同様の冒険主義的行動に出る可能性も除外できない。」
しかしその一方で、米国は北に対して行動を急がないと考えられる論拠も存在する。ジェビン所長は、さらに次のように続けた-
イラクでの戦争では、米国の砲弾が、誤ってか故意によるものかは判断できないが、イラクの隣国すべての領内に着弾した。とにかく、イラクではそういう事があった。ゆえに軍事的観点から見れば、ロシア及び中国と国境を接する北朝鮮領内であり得る米国の軍事行動は、理性を欠くものと思われる。まして北朝鮮は、核武装しているのだ。こうしたことは、現在の米行政府の極めて冒険主義的な性格を証拠立てている。」
こうして見てくると、トランプ大統領の側近らは、外交問題に関する彼の経験不足を利用して、彼にあまりにリスクの多い、非外交的解決法を吹き込んでいる、そんな印象を持ってしまう。一方これまで述べられたことを考慮するなら、米国は北朝鮮に対する、いわゆる政治的PRや強硬な発言までで自分を抑え、実際の行動には出ないと考える向きもある。まだ望みは残っている。