その当時フェイスブックに登録されていたアカウントは最大で数千だった。彼らは、現在使われていないサービスMSN(マイクロソフトネットワーク、マイクロソフトが運営するポータルサイトサービス)を通じて送られた300億ものテキストメッセージを研究し、数学的にこの理論を世界に証明した。この理論は「6次の隔たり」と言われるもので、全ての人や物事は6ステップ以内で繋がっていて、友達の友達…を介して世界中の人々と間接的な知り合いになることができるという(参考:ウィキペディア)。1967年、ハーバード大学の社会心理学者スタンレー・ミルグラム氏が提唱したものだ。
この理論を最も明らかに例証しているのが、ソーシャルネットワークであり、その影響力は今や、政治の世界に及んでいる。2014年から、世界中の指導者達は、Twitterを利用している。ロシアの国家モニタリング庁のデータによれば、ひと月にTwitterに集まる書き込みは、全体の63%に達している。ちなみにInstagram(インスタグラム)で公表されるのは、投稿される写真やビデオの14%に過ぎず、Facebook(フェイスブック)に至っては、メッセージのわずか1%にしか過ぎない。研究者らは、公人の成功は、SNSでの活動いかんにかかっていると強調している。まさにSNSに対する個人的アプローチが、今後の彼あるいは彼女のさらなる人気、支持率を助けているのである。
ロシア広報協会情報コミュニケーション委員会のセルゲイ・ヴォドペトフ議長は、スプートニク記者のインタビューに応じた中で、次のように指摘した-「コミュニケーション方法は、年々ますます簡単になっている。今日政治は、住民との開かれた対話にほぼ移行しつつある。これは世界的なトレンドだ。国連加盟国の指導者のうち、その70%が、様々なSNSの中に個人のアカウントを持っている。
これはすでに世界の現実である。人々は、宛名のあるメッセージを求め、最大限の公開性を望んでいる。これは、ソーシャルネットワークでの存在を通じても同じだ。まさにこのことが、有権者の足をあれやこれやの候補者へ一票を投じるため足を運ばせる動機となるのだ。ソーシャルネットワークという宛名のあるメカニズムを使わない人は、政治的な世界から零れ落ち、あらゆるチャンスを失ってしまう可能性がある。」
これは、公開性の完全な進化を意味している。なぜならそもそも、対話というのは一対一のものだからだ。そこで対話できること、それが、デジタル革命により生じた政治的挑戦、呼びかけなのである。それはパブリックな政治とその成功の一部になりつつある。
2012年フェイスブックは、地球上に住むあらゆる人とつながるには、何人必要かという調査をした。結果は5人だった。しかし昨年の調査では、この地球の最も辺鄙な人とも、3.5人辿ればフェイスブックの誰とでもつながることができるという。現在の政治家達も、そうした現実に生きなくてはならなくなっているのだ。
Happy New Year to all, including to my many enemies and those who have fought me and lost so badly they just don't know what to do. Love!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 31 декабря 2016 г.
トランプ氏は、可能なあらゆる手段を使って、宛名のあるコミュニケーションをしてきた。そして彼は、SNSを、大統領選挙で自分を助けた現代最高の伝達形態だと呼んだ。例えば、ブルームバーグ通信のラインにニュースを上げることができるのは、やっと2時間後だが、Twitterでは15秒後にはもう読むことができる。特に、もともと新聞を読まず、テレビニュースを見ず、公の情報が好きではないが、その代わり自分のラインをよく覗くといった有権者達にとって、SNSは力がある。
こうした現状について、国際政治鑑定研究所のエフゲニイ・ミンチェンコ所長は、次のような意見を述べている-「トランプ氏は、それを利用できるはっきりとした能力を示した。彼は、成功裏にコミュニケーションを利用した明白な例だ。彼は、伝統的な米国のマスメディアの情報封鎖に、本当の意味での風穴を開けた。確かにソーシャルネットを害あるものと扱う政治家達は少なくない。なぜなら両刃の剣のようなものだからだ。比ゆ的に言えば、反対者を斬ることができるが、自分自身も斬ってしまう事もある。」
トランプ氏が、大統領選挙に勝利して間もなく、CBS NewsのTVインタビューの中で、国家元首に就任してからはSNSを使う際「大変慎重にする」と約束したのは、決して偶然ではない。例えば、選挙の数日後、マスメディアは、トランプ氏の顧問は、彼からTwitterの個人ブログを停止させたと伝えた。そうした決定は、トランプ氏がブログを自分の政敵を中傷するために体系的に用いていたから下されたとか、有権者に、一連の問題に関する「フィルターに通されていない見解」を伝えてきたからだとも言われている。
この事はすぐに、当時まだ大統領ポストにあったオバマ氏の注意を引かないわけにはいかなかった。トランプ氏の補佐官の発言をコメントし、オバマ氏は「もし誰かが、Twitterのアカウントを処理できなければ、核の鞄を信じる事は出来ない」と述べた。
時に有権者のコミュニケーションの中では、家族が政治家を助ける場合がある。その明らかな例が、日本の安倍首相夫人の昭恵氏だ。彼女は、SNSを積極的に利用していることで知られている。彼女のページの登録者数は、13万7934人に達する。また昭恵夫人は、原発問題に関し政府の政策を積極的に批判している事でもよく知られている。
そうした理由から、彼女自身「自分は家庭内野党だ」と広言し、日本の多くの人々の安倍首相に対する態度を和らげる効果をもたらした。ここ最近、日本のマスコミは、ある時期彼女のFacebookのアカウントが、更新されなかったことに注意を向けた。森元学園をめぐるスキャンダルまで、彼女はFacebookに事実上毎日、書き込みをしていたからだ。
ロシアの日本専門家、アンドレイ・フェスュン氏の意見によれば、昭恵夫人は、スキャンダル後「状況を鎮静化するため、一時的にSNSから離れたのだろう」と見ている。しかし現在、彼女は再び、登録者達との交流に戻った。フェシュン氏は、さらに次のように続けた-
「安倍氏は、自分の首相ポスト在任期間を3期にまで延長した。昭恵夫人も、積極的なFacebookユーザーとして、夫の支持率を必要な水準に保つ助けることができる。なぜなら、彼女が選んだ「家庭内野党」という役割は、実際、彼女の夫の政策を有権者に説明する追加的なリソースだからだ。おまけに、それは多くの点で、若い有権者向けである。」
確かに、時折、政治家やその家族は、その居場所を変え、政治家が自分の家族を守ることもある。米国でもそうした事が起きた。米国の大手小売業者Nordstromが、トランプ氏の娘イヴァンカ・ブランドの衣料や靴を扱わないと決めた時、すでに大統領となっていたトランプ氏は、この出来事について自身のTwitterの中に「私の娘イヴァンカは、Nordstromの側から不当な扱いを受けた。彼女は素晴らしい人間で、私が正しい事のみをするよう常に応援してくれている」と書き込んだ。
米国の有権者にとって、より興味深いのは恐らく、トランプ氏の家族という米国の一種の英雄伝説を見守る事なのだろう。そのためには、SNSの彼らのアカウントに登録すれば十分である。しかし世界は、SNSを一度つなぐだけで決められてしまうような、時に予測不可能な政策に向けた準備が果たしてできているのだろうか?