現在経済学者らは、北極での採掘が採算がとれるかどうか算定中で、学者達は、地理学的生態学的リスクについて判断している。しかしこれはビジネスの上での話であり、単に北極に行ってみたい人ならば誰でも、ロシアの旅行会社「ヴェ-チェル・スヴァボードゥイ(自由の風)」を通じて、その夢をかなえることができる。
今年同社は、8月11日から12日にかけて、北極点旅行を望むあらゆる人達を、原子力砕氷船「勝利(パベーダ)50年」号を使ったツアーに招いている。同船自体これまで何度も、そうした特別の旅を成功させてきた。北極への航海の途中、もし船が多年氷に寄れば、そこでは船に近づいてくる白熊たちを見ることができる。彼らは、物珍しげに観光客を見ながら、後ろ足で立って歓迎してくれるだろう。動物園とはあべこべに、白熊が人間を見物に来るのだ。北極点に到達した後、旅行者はそこで、写真を撮ったり、北極点を真ん中にして輪踊りを踊ったり、氷の上でバーベキューをしたりして丸一日を楽しく過ごす。勇気のある人は、氷に穴を開けて、水浴びすることも可能だ。
北極ツアーにはもうひとつ、世界最北の192の島々からなるゼムリャー・フランツァ・イオシファ島嶼群を訪れるルートもある。子の島々は、北極からほぼ千キロの位置にある。1年のうち温かい時期は、この島々でも時にプラス10℃まで気温が上がるが、冬場はマイナス50℃以下に下がる。島嶼群の80%は氷に覆われ、その厚さは500メートルにも達する。氷河は海の中に落ち込み、氷山となり、それらがびっしりと島を取り巻いている。まさにこの氷河こそが、ツーリストの最大の興味を引く。なぜなら、氷河は我々地球のはるか遠い地質学的過去の証人だからだ。学者達によれば、毎年氷河は3.3キロ後退しており、数世紀後にはなくなってしまう可能性があるとの事だ。
ゼムリャー・フランツァ・イオシファ島嶼群に人が移住した事はなかった。木も生えていなければ実もならず、キノコも生えないし、飼いならすことのできるトナカイもいない。つまり彼らの餌となるようなものが何もないのだ。食用になるものや暖房用に燃やすものもここには何もない。流木でさえ燃えない。なぜなら、一年中凍っているため、乾燥しないからだ。20世紀になり北極探検が始まると、ゼムリャー・フランツァ・イオシファの島々にも、気象観測所や軍事基地が作られた。しかしソ連邦崩壊後は、軍や民間の施設の大部分が閉鎖となり、そのあとには巨大なゴミの山が残された。燃料が入っていたドラム缶や、使い物にならなくなった機械、金属類などだ。今年三月、プーチン大統領が、この島嶼群を訪れ、2010年に自身が出した「島嶼群の全面的清掃」に関する大統領令の成果を自分の目で点検した。
「ふつう私達のツアーは、一年先まで予約がある。しかし今年は、北極ルートの席がまだ残っている。これはめったにない事だ。時々ツアーは、日本人や中国人などアジアからのお客さんでいっぱいになる。また原則として、どんな外国人であっても、ロシア人グループの中に入ってツアーに参加することもできる。しかしその場合、外国人グループの時とは違い、通訳はつかない。北極クルーズを行う船は、事実上、浮かぶ五つ星ホテルと言ってよい。船室は快適で、料理のレベルも高く、多くの娯楽イベントも用意され、各人には特別のサービススタッフが付く。航行中、世界中の専門家達が、船が通る場所についてのレクチャーをしてくれる。原子力砕氷船は、大変豪華というわけではないが、船内には、我々のゲストが必要とするすべての物がそろっている。使用しているのは実際に使われている原子力砕氷船で、旅行シーズン中だけ、我が社が借り受けているものだ。シーズン中は、実際完全な形で、内部が改装される。北極海を、砕氷船が何メートルも厚さの氷を目の前で割りながら進む光景は、きっと忘れられないものになるだろう。」
2003年から旅行会社「ヴェ-チェル・スヴァボードゥイ」は、北極や南極クルーズ、世界一周航海を含め、500を超えるユニークな世界ツアーを組織してきた。中でも、ロシアの前人未到の地を訪れ写真を撮る冒険ツァーは、大きな人気を集めている。