ウラジオストクをおすすめする理由の一つは、もうすぐ行われるビザ緩和のおかげで個人旅行がしやすくなるからである。ロシア極東発展省は先月、「自由港」経由でロシア極東を訪れる外国人へのビザ取得手続きを8月1日から簡素化することを発表した。自由港とは、空港や港などの、国境の通過ポイントのことだ。事前にウェブサイトで手続きしておけば、自由港通過時、すなわちロシア入国時にビザがもらえる。滞在上限は8日間だ。
日露文化交流に長く携わっている「日本・ウラジオストク協会」副事務局長の田代紀子さんによると、ウラジオストクの魅力は、親日を超えた知日派ロシア人が数多く住んでいることである。日本人にとってウラジオストクは謎の街かもしれないが、ウラジオストク市民にとって日本は文字通り身近な国なのだ。日本文化への造詣が深い人が多く、日本語能力はもちろん、書道や折り紙、武道など、全てにおいてハイレベルなのである。日本を紹介するといっても、特に質の良いものを持っていかなければ、ウラジオストク人の肥えた目にはかなわない。
また反対に、ウラジオストクの文化レベルは近い将来、日本人を満足させられるだろう。ロシアを代表する美の殿堂であるエルミタージュ美術館、ロシア美術館、トレチャコフ美術館の分館が今年中にも誕生することになっている。特にサンクトペテルブルグにあるエルミタージュ美術館は、夏場は世界中からの観光客でごった返し、入場もままならない。分館ならば、落ち着いて作品を鑑賞できる。そしてマリインスキー沿海地方劇場では、世界最高峰のバレエやオペラを観ることもできる。演目も、本家サンクトペテルブルグのマリインスキー劇場と比べて遜色なく、日本人の好みに合った演目が多数上演されている。ウラジオストクはロシア極東における随一の文化都市なのだ。
旅情あふれる旅をしてみたい人は、「DBSクルーズフェリー」で行くというのも良いかもしれない。鳥取の境港から韓国の東海を経由し、ウラジオストクに行く船が毎週土曜日に出発している。こちらはエコノミーで往復4万4千円と、少しお得に旅することができる。ウラジオストクには一泊千円程度で泊まることのできるホステルやゲストハウスも次々登場しており、宿泊先も交通手段も選択肢は確実に増えている。
ここまで、さんざん期待をもたせるような文章を書いたが、それもこれもビザ緩和の運用が予定通りに行けばの話である。田代さんも「現場での運用が始まるまでに時間がかかるのがいつものウラジオストクのパターン」と懸念を示す。現段階でロシア極東発展省は、7月1日から到着ビザ付与のテスト施行を始めると明言しているので、スムーズな運用開始を心から期待したい。