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麻生大臣の約束は実現した。今月現地時間3日、カナダ・トロントで開催のTPP首席交渉官会合は2日間の日程を終えた。会合では、首席交渉官の片上慶一・外務省外務審議官によると、「TPPの意義を踏まえ、モメンタム(勢い)を失わないよう議論を前に進める必要があるという点で各国に共通の思いがあっ」た。5月にもベトナム・ハノイでTPP閣僚会議が開かれる。
TPSEPのテキストは、シンガポール通商産業省のサイトで見ることができる。
TPPの基本的なアイデアは、多国の生産を繋げる鎖を構築することにある。例えば、シンガポールでのアイス生産にニュージーランドの牛乳とオーストラリアの砂糖、メキシコのココアが使われ、最終製品は米国で供給される。もし製品をこの図式に沿って生産するなら、製品価格を上げて競争力を下げるあらゆる関税の撤廃が理にかなっている。さらに、TPP加盟国が太平洋沿いの様々な位置にあるため、船舶の動きを遅らせる通関手続きを最大限に簡素化するという課題が設定される。つまり、免税条約(Duty Free Treaty)と「急送便サービス」(Express Delivery Shipment)の2つがTPPの支柱なのだ。
2008年に米国がTPP交渉国に追加されたことは、協定に一定の重みとダイナミクスを与えて、日本を含む他国の参加を促した。2001年すでに緊密な経済パートナーシップに関する最初の協定を結んだシンガポールとニュージーランドにとっては、TPPの仕組みは論理的で旨みがある。この2国はグローバル市場において、国内総生産で自国の立場を守れるほどの経済力を有していない。低い関税ですら彼らの貿易にとっては致命的だ。だが、協定に加わるようオバマ前大統領を強いたものが何かを言うことは難しい。トランプ大統領が放棄した理由を述べるほうが易しい。アメリカ国際貿易委員会(U.S. International Trade Commission)のデータによると、TPPの2032年までの米国経済への影響は次のように評価された。国内総生産(GDP)の伸び0.15%、雇用率の伸び0.07%、輸出の伸び1.0%、輸入の伸び1.1%。予測される米国の利益のこのような数字を見て、トランプ大統領はそれを冗談だと受け止め、その後にはTPP離脱に署名したに違いない。
第2に、日本、シンガポール、マレーシアの一部から構成されるハイテク技術の中核が形成されることは不可避で、それは米中、EUに挑戦状を送ることができる。この中核の立場は韓国と台湾を引き込むことで強めることが可能。もしこの同盟が形成されれば、マイクロエレクトロニクス市場での鍵となる立場を掴み取る大きなチャンスが現れる。
第3に、中国がTPPに向かうことはないだろう。それは、中国が自前の国際インフラプロジェクトの実現に突き進んでおり、自前の同盟、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を提案しているためだ。それに、時間とともにTPPの全経済が主に中国のものになる可能性があると理解しながら、TPP加盟国としての中国を、他の加盟国は見たがるだろうか?さらに、中国とTPP間に過酷な競争が起きて、貿易戦争や、経済的な性質を持った軍・政治的緊張の激化にまで至る可能性は十分にある。このような条件下でTPPは、政治的庇護者として米国を必要とする。総じて、TPPは遅かれ早かれ機能し始めるが、波乱に満ちた濃密な出来事が待ち受けていると言うことができる。