すでに知られているように、安倍首相の任期は6年から9年に延長された。一方、広島の自身の選挙区を訪れた際、岸田外相は「いつか安倍首相の任期は終わる、それは当然のことだ」と述べている。これにより岸田氏は、今後彼が政治家として何をすることができるのか、もう今考える意向を示したと言ってよい。これに関連して、専門家の中には、憲法見直しに反対する岸田外相の発言を、将来彼が首相の座を狙うため、自身の自主的見解を強調したかったのだろうと捉える向きもある。
これに関連してスプートニク記者は、ロシアの日本専門家、アンドレイ・フェシュン氏に意見を聞いた。氏は「岸田外相は、頭が良く野望を持った政治家だ。明らかに将来を見据えた政治的展望を持って行動し。こうした発言をしている」と指摘し次のように続けた-
「安倍氏は、首相の座に留まるために、できる限りのことをした。もし何らかの大変動が生じなければ、その座に留まるだろう。しかしこの事は、残りの皆が、沈黙を守ることを意味するものではない。ただそれは、日本の政権内における本格的な争いとは言え、いわゆる「独り相撲」のようなものだ。彼らは互いにあまり違いはなく、定期的に互いに党のリーダーや首相のポストを交代しあっている。大変若く賢い政治家である岸田氏にも。そうしたポストに就くあらゆるチャンスがある。もし今回でなくとも、次がある。今回の発言も、そうした途上における一歩である。」
安倍首相と彼の政府の側から、あらゆる形で北朝鮮からの脅威が強調されているにもかかわらず、首相が提案する憲法の平和条項見直し は、第二次世界大戦後の絶対的な平和教育を受けた国民の間では幅広い支持を得てはいない。彼らには長年にわたり、日本国憲法は、最も平和愛好的であり、それゆえ最も良いものだ、何かが起こっても日本は、米国のしっかりとした『安全の傘』の下にあるのだ」という考えが吹き込まれてきた。一方安倍首相は、時を経るに従って、それが必要不可欠だと思われるところで、米政府から独立した見解を示すようになっている。例えば、ロシアとの関係改善がそうだ。なお、まさにこの時期に韓国では、ムン・ジェイン(文在寅)氏が新しい大統領となった。彼は、朝鮮半島におけるTHAAD(終末高高度防衛)ミサイル配備問題を見直すと約束した。 そうした発言は、明らかに米国防総省のプラントに逆行するものだ。現在、軍事専門家の中には、米国のTHAADミサイルは時が来れば、日本にも現れる可能性があると見ている。恐らく、米国の戦略的同盟国の頑固さに慣れることができなかった人達は、予め日本の頼りになる政治家達の支持を確保したいと望むだろう。
さて岸田外相の発言だが、フェイシュン氏は「これは米政府が、自分達にとって都合のいい首相候補者を推すため、日本での選挙キャンペーンを始めた事の表れと受け止めてもよい」と述べ、次のように続けた-
憲法問題の場合、岸田外相は、脅威と日本国民の本質的に平和を愛する気持ちを背景に軍隊を強化しようという、まさに安倍首相の対外政策に矛盾する役割を演じる可能性がある。岸田氏にとってこれは、一定の数の政治的ポイントを挙げる、現実的なチャンスである。例えば、朝鮮半島情勢あるいは米中関係が先鋭化した場合だ。紛争の激化は、自分達を守ってくれるに違いないとの大きな信頼を国民から最も受けるリーダーの周りに、人々を団結させる。しかし日本人にとって、そうした守り手とは何だろうか? それは当然ながら、日本に駐留する米軍である。岸田氏は、米国との軍事協力の一層の強化を固く支持する姿勢を、必ずや示す事だろう。
そのようにして、必要性が生じた場合、岸田氏は、安倍首相の政策のバランスをしっかりとる役割を演じるのである。」
この地域における米政府の別の戦略的パートナー国である韓国が、日本の軍国化に断固反対であるから、それはなおさらだ。米国は、長年にわたり、両国の歴史的過去について日韓両政府を最終的に和解させようとの試みを止めてはいない。日本の平和憲法に修正を加えることは、日韓関係にまた新たな「不和の種」を作り出すことになる。それは、中国との競争において、リードを保つことがますます難しくなっている米国の利益に、全くならない。その一方で、米国防総省の地域戦略プランにとって、日本の自衛隊は、極東において最も戦闘能力の高い軍隊なのである。