そうした壮大なプロジェクトに参加するための基礎となっているのは、ここ最近の露日関係の温暖化であり、両国首脳の相互訪問である。シベリア横断輸送問題調整評議会のゲンナジイ・ベッソノフ事務局長は、東京でのビジネスフォーラム「ユーラシア貨物輸送発展の新たな可能性と展望」で、このプロジェクトに言及した。
今年2月、ソチでの投資フォーラムでロシア鉄道のアレクサンドル・ミシャリン副社長は「作業グループ作りについて日本側と交渉中だ、そこではこのプロジェクト実現の可能性が詳細に検討される」と語ったが、日本側の代表とは誰なのか明らかにしなかった。またミシャリン副社長は「我々は現在、フィージビリティ・スタディ(実行可能性調査)の修正を行っており、その後で、修正案は橋建設に関する決定採択のため、政府に示されるだろう」と付け加えた。先にロシアのミハイル・ソコロフ運輸相は、これは次の10年を見越したプロジェクトだとしながらも「その実現のためには、日本からロシアを経由して欧州へ、そして欧州から日本へと行き来する貨物の総量の見通しを計算する必要がある」と指摘した。これについて、日本の専門家達も心配している。例えば、環日本海経済研究所(ERINA)の辻久子研究員は「サハリンとロシア本土をつなげても、人や貨物の量は限られる。そこで、その先の日本までつなげることで、石炭や石油の輸出先や、逆に日本からの物流を見込んでいるのではないか?」といった鋭い見方を示した。
「日本について話す前に、ロシアにとってサハリンの鉄道を本土とつなげることが必要だ。これは大分以前からの、非常に差し迫った問題だ。巨大で極めて豊かなサハリン州をロシア全土と実際につなげることが必要である。これは国家的課題であり、我々は、日本に期待しないで、その方向で現実的一歩を しるす必要がある。もし将来性があり儲かると分かれば、日本は国として参加してくるだろう。我々の研究所は、プロジェクトのフィージビリティ・スタディを行った。そこから言えるのは、このプロジェクトは技術的に困難でかつ複雑だが、完全に実現できるという事だ。そして今このプロジェクトは、極東発展にとって大変重要である。ここで必要なのは、インフラを整備し橋や鉄道を建設する事だ。このプロジェクトから、現実的な見返りがあると分かれば、日本だけではなく他の国々も喜んでここにやって来るだろう。」
一方北海道とサハリンを結ぶ輸送ブリッジについて言えば、これはロシアにとっても日本にとっても利益がある。なぜなら、かなり多くの貨物や旅行客の移動を保証できるからだ。この事は、露日両国を近づけるだろう。もし日本が、この輸送路の利点を評価し同意するならば、プロジェクトの前進はロシア側そして日本側、双方から同時に始まり、大きな経済効果が生まれる。サハリン領内の2つの幹線のその後の結合に向けた最適なアプローチそして技術、金融、労働力が結び合わさって効果が上がるに違いない。」
なおロシア鉄道輸送問題調査委員会の評価によれば、ロシアと日本を結ぶ橋の建設には、およそ1兆ルーブル(約1兆9600億円)かかると言う。もしサハリンと本土、そしてサハリンと北海道をそれぞれつなぐ橋の建設が同時に始まれば、プロジェクトの実現には、3年から5年かかると見られている。