大統領府高官は「我々は、すでに韓国に送られた2基の発射装置を送り返す必要があると言っているわけではない。しかし、残りの設備の持ち込みに関しては、今のところ待つことになるだろう」と強調した。THAAD(終末高高度防衛)ミサイルの配備は、周囲の環境に対する影響をさらに調査するため中断され、その際、環境モニタリング調査には、数年かかるだろうという事だ。
自国領内にTHAADミサイルを配備するのを、韓国新政権が事実上凍結するのを決めたのはなぜだろうか、何が彼らをそう促したのだろうか? これは、パク・クネ前大統領の弾劾後、先月の選挙で選ばれたばかりのムン・ジェイン大統領の新しい方針なのだろうか? あるいは、米国のミサイル防衛システム関連施設が近くに置かれることに強く反対する住民の声を考慮したものなのだろうか?
ロシアを代表するコリア問題専門家、ゲオルギイ・トロラヤ氏は「朝鮮半島で大分以前から進んでいるNATO的プランの思いがけない凍結は、実際、ムン・ジェイン氏の大統領選挙運動中の発言と関係している」と指摘し、次のように続けた-
「大統領選挙中、ムン・ジェイン氏は幾度となくそれを約束し、THAAD配備に関する決定は、国内であまりに性急に下されたとの考えを述べていた。これらのプランについて米国は、韓国の新指導部と話し合うべきだったというわけである。すでに知られているように、米国はそうしなかった。あべこべに、前政権中にできるだけ早く自分達のプランを現実のものにしようと急いだ。しかしムン・ジェイン氏が政権の座に就き、彼は、単に米国人の言いなりになることはできず、有権者に約束した事から根本的に離れることもできない。それゆえ彼は現在、一方で有権者を満足させ、韓国人のプライドをくすぐるような何らかの措置を、他方では、自分に強い圧力をかけてくる可能性のある米国人のプランに矛盾しないような措置を取らざるを得ないのだ。
韓国大統領府の高官は「ムン・ジェイン大統領は、THAADミサイルの配備を早急に行うべき課題だとはみなしていない」と指摘し、さらに次のように伝えた-「北朝鮮は、すでに長い期間にわたって、核実験を実施している。それゆえ国の法律を無視してまで、THAADミサイルの配備を急ぐ必要はない。」
この問いに対し、トロラヤ氏は、次のように答えている-
「おそらく今、THAADの設備が元に戻される事はないだろう。それらはすでに韓国内にあり、きっとそこに残されるだろう。しかし現在、状況が許しているのは、韓国新行政府がTHAADの実戦配備をせめて遅らせる事に過ぎない。例えば、できるのは何らかの専門的調査をしたり、あるいは議会で聴聞会を開いたり、レーダーの何らかのパラメーターを制限したりすることだけだ。 つまり、ミサイル防衛システムは韓国にあるが、半稼働状態か、そもそも稼働状態にないようにする方法を見つけ、そうした状態を示す事である。そのようにすれば、ある期間は、有権者もまた米国も満足するだろう。ただ米政府からの反応は、否定的なものになるに違いない。その後双方は、やはり同盟国との関係のというコンテクスト全体の中で、問題を解決する事になるだろう。今のところ状況は、若干自然発生的に進んでいる。なぜなら、現在トランプ政権内ではコリア政策を特に誰もリードしていないという感じがあるからだ。
しかし、それでも米韓トップ会談が行われれば、やはり数カ月後に我々は、対外政治上の取引を目にするだろう。米国側は、THAAD,に関して何らかの妥協をするかもしれないが、それは純粋にシンボリックなものに過ぎないと思われる。それも、自由経済ゾーンに関するものなど韓国側が極めて大きな譲歩をした見返りとしてだけだろう。」
現在、韓国には、THAADミサイルの発射装置、全部で6基のうちの2基がすでに送られている。