スプートニク日本
まず起こった事実を振り返ってみたい。6月6日、センターの職員数名が、プルトニウムとウラン酸化物の混合物の入った容器を点検中、保管状況を調べるため金属容器のフタを開けたところ、ビニールが破れて、放射能を帯びた埃あるいは噴霧上のものが飛散した。5人の作業員の方の衣服や手、頭などが放射能汚染され、そのうちのお一人の肺からは、プルトニウム239とアメリシウム241の同位体が見つかった。
日本原子力開発機構は、被爆した放射線量はわずかで、健康に何ら脅威を与えるものではないと請け合っている。被爆された職員の肺の中から検出されたプルトニウム239は2万2千ベクレル、アメリシウム241は220ベクレルだった。他の職員の体内放射能汚染のレベルは、2千から1万4千ベクレル程度だった。とはいえ肺の中に放射性物質が残っている。最も多く被爆した職員にとって、年間線量は、ほとんど年間1.2シーベルト(あるいは120レントゲン)にまで達する可能性がある。この数字は、将来的に深刻な健康被害を引き起こす恐れのあるものだ。
混合酸化物中に、アメリシウム-241の量を決定するために十分なものが蓄積されるためには、およそ10年から12年かかる。
さらにアメリシウム自体も、 熱を放出しながら分解されてゆく。次第に容器は温められ、中の圧力が、容器の覆いを胴体に強く押し付けるまでに上がったのである。それで職員が、容器のフタを開けたところ、ビニールが破れて放射性物質が飛散した。圧力の変化が影響したとみられる。
このように今回起きた事の全体は、かなり単純であることが分かる。しかし一連の問題を提起している。まず第一に、プルトニウムは、この研究施設内に、どれくらい長く、事実上、点検もされないで保管されていたのか?という問題だ。
そして第二は、容器の構造がどれほどしっかりしたものだったか、中身の詰め過ぎから破裂が始まるのではないか?というもの、さらに第三は、この研究センターに一体どれくらいのプルトニウムがあるのか?という問いである。
今のところ日本に対しては、そうした非難は寄せられていないが、それでも状況は深刻だ。もしプルトニウムが長年にわたり、研究施設内の容器に置かれたまま、めったに点検されない場合、それらは、放射性物質不法利用の前提条件を作り出すことになる。また保管場所から盗み出される可能性もあるし、例えば、そこが一種の「隠し場所」のようなものとなるおそれもある。そうなれば、非常に長い年月の間に、専門家の注意の対象外となり、その後、軍事プログラムまでも含めた何らかの目的に、こっそり使用されるかかもしれない。
いずれにしても、今回の出来事を通じて、日本の原子力産業には、解決が求められる十分多くの問題がすでに蓄積されている事が、明らかになるだろう。
被爆された職員の方々の御健康の回復を、心から祈る。
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。