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自動車業界に詳しい佃モビリティ総研の佃義夫(つくだ・よしお)代表は、「エアバッグは定期交換するべきもの」と指摘する。
佃氏「自動車にとって安全性は宿命的な課題です。本質的な原因は究明できていませんが、エアバッグの異常破裂は、自動車の耐用年数が長いことに加え、新車から中古車へエアバッグが使いまわしされていること、つまり経年劣化に起因しているとみられています。日本のように車検があれば保安部品を交換できるので、エアバッグも保安部品に指定して、定期的に交換するべきだという議論が出ています。他のエアバッグメーカーも火薬を使っているので、経年劣化による同じような問題が飛び火する可能性もあるかもしれません」
また、トップの危機管理に対する姿勢が、事態をより悪化させたとも言える。タカタ創業家3代目の高田会長兼社長はほとんど表舞台には立たず、会社の閉鎖的な体質をアピールすることになってしまった。
しかしロシアの専門家の中にはタカタを擁護する声もある。スプートニクのドミトリー・ヴェルホトゥロフ解説委員は、事の本質はエアバッグの欠陥ではないとみている。
ヴェルホトゥロフ氏「今回の騒動の発端は、タカタのライバルの米国メーカーだと思います。彼らがタカタを失脚させるための運動をしたと証明することはもちろんできません。しかし米国にどれだけ多くの日本車があるでしょうか。その膨大な台数と、これまでのエアバッグ事故の件数をつきあわせてみれば、エアバッグが原因で死亡する確率は極めて低いものです。米国における反タカタ運動はこれが初めてではなく、1995年にはタカタ製シートベルトが原因で840万台がリコールされ、制裁金が課されました。安全のためというレッテルを貼っておいて、その実、日本メーカーを叩いているのです」
様々な問題が複雑に絡み合い、かつての優良メーカーは倒産してしまった。タカタ問題は、完成車メーカーと部品サプライヤーの責任をどう捉えるかという教訓を残した、と佃氏は言う。「リコールは本来、完成車メーカーの責任で行うものですが、今回はタカタが非難の的になりました。今後の自動車には人工知能の搭載など、異質のサプライヤーがどんどん入ってくることになり、自動車は更にブラックボックス化するでしょう。その中でメーカーとサプライヤーが問題をどう予見し、安全への取り組みを行うか。タカタ問題は両者の関係性のあり方に大きな警鐘を鳴らしました」