団長を務めた長谷川栄一首相補佐官は根室市で記者会見を行い、「自然が印象的で、観光資源としての大きなポテンシャルを感じた」と述べた。この状況を元島民はどう感じているのだろうか。共同経済活動の賛否について様々な意見を聞いた。
調査団は択捉島で、ログハウス風の宿泊施設や火山のそばの温泉、商店などを視察した。択捉島・蘂取出身の、鈴木咲子さんは、事業実施にあたっての条件を両国が定め、それを遵守することの重要性を強調している。
鈴木さん「日露が事業を互いに育んでいけるように条件をきちんと決めて、それにのっとってやっていくなら、共同経済活動は悪いことではないと思います。根室も北海道も元気にならないといけません。ロシア人が、根室や北海道の学校に通ったりしても良いのではないでしょうか。医療協力もロシア人の役に立つと思いますし、日本としても漁業や海面養殖ができればよいと思います。両国関係を良い方向にもっていくことにこそ、共同経済活動合意の意味があるので、それに向けて日露とも同じだけ努力してほしいです」
また調査団は色丹島において、発電所や水産加工を手がけるギドロストロイ社の関連工場などを見学した。色丹島・斜古丹出身の得能宏さんは「今回の共同経済活動が両国双方の価値を高める一つのモデルになってほしいです。島の共同開発にあたって、厳しいものをお互いに抱えていることは事実だが、上手く話し合って両国の立場をすり合わせてほしい」と話している。
古林さん「日本が主張しているように、互いの主権を侵さず特別な形でやるのなら、共同経済活動については不賛成ではありません。ただロシア政府の高官たちの話を聞いていると、あくまでもロシア主権の下で行いたいということを言っていますから、どういう形になるのか…。元島民としては、共同経済活動が進むと『お互い共同利用できるなら現状維持で良い』という話になってしまうのでは、と懸念しています」
国後島・留夜別出身の池田英造さんは、共同経済活動の成否は、日露がどれほど本音でぶつかれるかにかかっている、と指摘する。
池田さん「共同経済活動は、日露が話し合いをする良い機会だと思います。今はまだ、本音で語り合いたいと思っても、互いに用心している段階です。これでは互いに互いを信じられませんし、互いに信じ合わないで共同事業をやってもうまくいかないと思います。会議は、時には火花を散らしてでもやって、本音をぶつけ合い、会議が終わったら友好的に戻るべきです」
長谷川補佐官は会見の中で、「制度面で解決しなければならない点も明らかになった」と述べ、まだ共同経済活動遂行にあたっての法的基盤が日露間でまとまっていないことを明らかにした。果たして日露両政府は合意に達し、共同経済活動をスタートさせることができるのだろうか。