ロシアの戦車工場「ウラルワゴン工場」見学と社長インタビュー【写真】

© 写真 : Rostec/Anton Tushinウラルワゴン工場
ウラルワゴン工場 - Sputnik 日本
サイン
産業博覧会「イノプロム」のためエカテリンブルグを訪問した筆者は、ロシア最大の戦車工場「ウラルワゴン工場」の見学にも足を伸ばした。ウラルワゴン工場は、エカテリンブルグから車で北に2時間ほどのニージニー・タギル市にあり、戦車製造においては世界で10本の指に入るといわれている。最近では「T-90」や「アルマータ」の製造で知られている。

意外と侮れない?ロシアのものづくりが目指すものとは - Sputnik 日本
意外と侮れない?ロシアのものづくりが目指すものとは【写真】
スプートニク日本

同社は国営持ち株企業ロステフ(Rostec)の傘下に入っており、戦車以外に路面電車の車両など民生品の製造もしている。2017年中に民生品の割合を全体の1割まで上げることを目標にしている。

見学と言っても、残念ながら戦車製造ラインの見学は許可されていない。2016年春、様々なメディアから「戦車製造過程を見学できる軍需観光ツアー開始」というニュースが出たが、ウラルワゴン工場のユリア・コルマコワ広報課長は「戦車製造ライン見学を外国人に許可したことは一度もない。そのような報道は何かの誤解ではないか」と話している。ともかく現在、外国人が立ち入れるのはウラルワゴン工場の歴史を知る博物館と、装甲車両博物館だけである。

歴史博物館によると、ウラルワゴン工場の建設がスタートしたのは1931年5月8日。当時はソ連指導部による農業集団化に反対した人々が土地を奪われ、ウラル地方やシベリアで強制労働させられていた。「特別移住者」と呼ばれた元農民や政治犯は劣悪な条件下で、素手で作業していた。多くの犠牲を出し、5年間かけて工場は完成した。当初は社名の「ワゴン」の名の通り鉄道車両を製造していたが、戦争が始まると状況は一変。ウクライナのハリコフから疎開してきた技術者らの力で、ウラルワゴン工場は戦車工場に姿を変えたのである。戦時中は8歳の少年を含む四千人の子どもたちが働いていた。鍋やスプーンといった日用品も自分達で作り、人々は着の身着のままで労働していた。独ソ戦で一躍有名になった「T-34」はこうして作られていたのだ。

© Sputnik / Tokuyama Asukaウラルワゴン工場外観
ウラルワゴン工場外観 - Sputnik 日本
1/6
ウラルワゴン工場外観
© Sputnik / Tokuyama Asuka歴史博物館。工場建設の模様
歴史博物館。工場建設の模様 - Sputnik 日本
2/6
歴史博物館。工場建設の模様
© Sputnik / Tokuyama Asukaロシア製戦車の所在地
ロシア製戦車の所在地 - Sputnik 日本
3/6
ロシア製戦車の所在地
© Sputnik / Tokuyama Asuka戦車の設計図
戦車の設計図 - Sputnik 日本
4/6
戦車の設計図
© Sputnik / Tokuyama Asuka戦車の展示
戦車の展示 - Sputnik 日本
5/6
戦車の展示
© Sputnik / Tokuyama Asuka工場敷地内にある教会
工場敷地内にある教会 - Sputnik 日本
6/6
工場敷地内にある教会
1/6
ウラルワゴン工場外観
2/6
歴史博物館。工場建設の模様
3/6
ロシア製戦車の所在地
4/6
戦車の設計図
5/6
戦車の展示
6/6
工場敷地内にある教会

プーチン大統領は現在、エカチェリンブルグで開催中の外国の最新技術を紹介する展示会「インノプロム」を訪れ、日本のハイテクを視察している。プーチン大統領は現在、エカチェリンブルグで開催中の外国の最新技術を紹介する展示会「インノプロム」を訪れ、日本のハイテクを視察している。 - Sputnik 日本
プーチン大統領「イノプロム」展示会視察 日本のオートバイに「持っているけど、乗らないようにしている」
装甲車両博物館にはロシアの戦車が世界中のどこで使われているか示した地図が貼ってある。エジプト、キューバ、ベネズエラといった国々はロシアのお得意様だ。ウラルワゴン工場は戦車製造のラインセンスをリビアやインド、アルジェリアなどに販売しており、これらの国々ではロシア式戦車が現地生産されている。実際に戦闘で使われたT-34を始めとする戦車の展示もあり、希望者は戦車の中に入れるほか、実戦で使われなかった「失敗作」も見ることができる。

ニージニー・タギル市は、人口約35万人の典型的な企業城下町。市民のほとんどがウラルワゴン工場の関係者であり、筆者を案内してくれた人も祖父の代からウラルワゴン工場で働いているという。最新鋭の医療センター、アイスホッケーのためのリンク、文化宮殿という名の劇場など、市の規模から考えれば贅沢な設備が揃っており、文化宮殿内にはプーチン大統領も訪問した最新の会議設備がある。この文化宮殿は、ウラルワゴン工場の戦車のおかげで対独戦に勝利できた、というわけで、戦後のご褒美として建設されたものだ。ウラルワゴン工場の関係者は「ニージニー・タギルという市を残すことは企業の死活問題。他に条件の良い都市はいくらでもあるので、子どもたちがここで働きたいと思ってくれるように、また両親が安心して働けるように、文化・スポーツ施設を充実させなければならない」と話す。

ウラルワゴン工場のアレクサンドル・ポタポフ社長は「工場全体に対する需要は増えており、人員削減は全く考えていません。民間用で最も期待しているのは貨物車両、道路建設機械、農業用キャタピラー付きトラクターです。強力な武器を持っているほど穏やかに暮らせる、とよく言われますね。私は戦車を納入するときはいつも、『これが戦場でなくて、演習にだけ使われますように』と言っています。製造者として、我々の家族が平穏に暮らせるように、質の良いものを作っていきます」と話している。

ニュース一覧
0
コメント投稿には、
ログインまたは新規登録が必要です
loader
チャットで返信
Заголовок открываемого материала