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米国のインテリジェンスと一連の公開組織(IISSはそのひとつ)で見解が共通しているのは、北朝鮮が発射実験を行った新たな大陸間弾道ミサイルのエンジンは「おそらく」ウクライナ製であるという点だ。記事によると、この技術はドネプロペトロフスクにある「ユージュマシュ」の工場から入手したものである可能性がある。
専門家のウラジミル・エフセエフ氏は次のように言う。「北朝鮮のグアム島に対する核ミサイル攻撃が現実問題となったとき、米国はこの状況をゆるした犯人を探さざるを得なくなりました。そして、実際のところ、北朝鮮の弾道ミサイル開発がこれほど急速な進歩を遂げた原因として、最も有力なのがウクライナなのです。」
専門家らは、2014年のマイダン革命後の混乱の中、まさにウクライナからミサイル技術が漏えいした可能性が高いと考えている。既に「ユージュマシュ」としては、生き残り競争のために工場が潜在的に危険な技術を外国に、とりわけ中国に売り渡したことはないと否定している。しかし、専門家のコンスタンチン・シフコフ氏はこの声明を信用していない。
シフコフ氏は言う。「ウクライナがソビエト時代から持っていた技術は、機密であるにもかかわらず、すべて売り渡されてしまいました。「アントーノフ」社が、現在のウクライナ指導部によって文字通り消滅させられ、その中味がすべて中国に売り渡されてしまったことは周知の事実です。北朝鮮にも、支払いが良ければ、何かを売り渡していたことは間違いないと私は考えています。そして、グレーなスキームを通じて何らかの核技術がウクライナから北朝鮮に流れたのです。」
核兵器を搭載できる実用可能なICBMの開発という北朝鮮の事業が、予想よりもはるかに急速に進んでいることも、この考えを後押ししている。元CIA長官のレオン・パネッタ氏はCBSの番組『Face the Nation』のインタビューで次のように語っている。「どうやって彼らがこのような進歩を遂げることができたのか。正直なところ、米国にとっても、全世界にとっても驚きです。」
「ウクライナから北朝鮮への軍事技術の漏えいは、ただ発生していただけでなく、記録にも残っています。マイダン以前にも、ベラルーシで北朝鮮国籍の2人が逮捕され、大陸間弾道ミサイルの第一段ロケットエンジンの文書を持ち出そうとした試みが阻止されたことがあります。彼らと積極的に協力していた人たちは逮捕され、投獄されましたが、漏えいは起こっていたのです。また、「ユージュマシュ」の敷地から、長距離弾道ミサイルに使われる所謂ステアリングアクチュエーターが持ち出されたこともありました。こうした事件が2014年以前にも起こり得たのであれば、国内が危機に陥り、多くの人が技術の違法売却で儲けたいと強く願うようになったとき、どれほどの「技術漏えい最盛期」が訪れ得たかは想像に難くありません。北朝鮮ミサイル開発への関与も、儲けの手段としてあり得たことでしょう。というのも、「ユージュマシュ」で働いていた専門家たちは、固形燃料のミサイルだけでなく、液体燃料のミサイルの開発にもアクセスすることができたからです。その中には、火星12や火星13のような最新型も含まれます。」
ちなみに、聯合ニュースが伝えたところによると、北朝鮮はグアム島(米国)攻撃のために、まさに「火星12」ミサイルを4基準備したという。総合ニュースによると、北朝鮮は中距離ミサイル4基を使って、米空軍の主要施設が置かれているグアム島への攻撃を真剣に検討しているという。
もし、この状況をゆるした原因がウクライナにあると証明されれば、それは、国際的に最も高い水準でウクライナに深刻な制裁が科される原因となってしかるべきでものある。ウラジミル・エフセエフ氏は深刻な制裁に至る可能性もあると考えている。
ユージュノエ設計局の主任設計士であるアレクサンドル・デグチャリョフ氏は、どこかの国が「ユージュマシュ」で製造しているウクライナ製ミサイルエンジンをコピーした可能性はあると述べている。しかし、ウクライナの罪を問うThe New York Timesの記事については、概して「フィクション」であるとしている。しかし、米国の専門家らはこの発言をあまり信用していないようだ。というのも、ペトロ・ポロシェンコ大統領のウクライナ政府が「ユージュマシュ」内部の事態をコントロールできているという証拠が一切ないからだ。
ウクライナでもこれが既に理解されつつある。全ウクライナ連合「祖国」の党首を務めるユリヤ・チモシェンコ氏は、もしもウクライナが北朝鮮に兵器と軍事技術を売却したという情報が真実だと証明されれば、ウクライナを待っているのは「制裁と大惨事」だと述べている。ウクライナは先進国からの支援を一切得られなくなり、しかも、北朝鮮の「親友」というレッテルを貼られることになる。