テロが起きたことがない欧州諸国を思い出すことは、今日もはや難しくなっている。EU本部とNATO本部があるブリュッセルさえもテロの攻撃を受けた。昨日まで欧州は順風満帆で全世界に開かれ、「寛容」の言葉が何より政治的重みと価値を持っていたのに、21世紀の欧州に何が起きているのか?
『グローバル政治の中のロシア』誌のフョードル・ルキヤノフ編集長がスプートニクに自身の見解を伝えた。
「テロリズムは日常的な現実、欧州の生活の一部になった。もちろん、テロが毎日起きているとは言えないが、これはすでに、今日の欧州人みんなが念頭に置いているような現象だ。起きるかもしれない、と仮定されているのだ。欧州の本当の『イスラエル化』が起きている。イスラエルは知られているように、数十年にわたってこのような感情と、不可避のテロリズムというはっきりした理解とともに生きている。テロリズムとは戦う必要があり、テロの抑止は不可欠だが逃れることはできない、という理解だ。そして欧州も現在、同様の現象に直面している。最近の出来事はすべて、イスラエルのようになっていくと物語っている。イスラエル化の結果として、テロ対策システムの絶え間ない改良と、トライ・アンド・エラー方式による安全水準の向上がなされていく。欧州でのテロ1件1件がこの道におけるレッスンとなる。イスラエルのようにだ。」
「安全というテーマは今後、選挙や政治的討論における支配的テーマとなる。だが、欧州が何らかの強迫観念やテロに対する コントロール措置を急激に強化する方向へと急進すると見ることは時期尚早だ。とはいえ今後の趨勢が変わらなければ、このようなことが起きる可能性はある。もちろん、移民政策にも影響が及ぶ。移民は複数の問題が共生した非常に複雑なものであり、欧州の移民政策が単純な解決法を持たないと誰もが良く理解していてもだ。単純な解決法とは、『不法移民の何かしらのチャンネルをどこかでただ堰き止めるか、欧州に辿りついた移民を強制送還する』といったものだ。しかし欧州特有の政治的伝統のために、この措置は不可能だ。」
しかし、欧州でのテロが、現地で安定した家と庇護を見つけたかのように思われた人物によって行われる頻度は高くなっている。スペイン紙エル・ムンドによると、バルセロナの中心部で人混みに車を突っ込んだ実行犯とみられるのは、ムーサ・ウカビル容疑者(17)。ムーサ容疑者は、テロ発生後に逮捕されたカタロニア市民のドリス・ウカビルの弟だ。ムーサ容疑者が兄の身分証明書を盗み、2台のワゴン車をレンタルしたという説が濃厚だ。
「移民政策の厳格化が後に続くだろう。それほど明らかではないが。例えば、現在ドイツで選挙活動が行われている。メルケル首相の政党が勝つと高い確率で予測できる。しかし同党は非常に慎重に行動している。選挙キャンペーンでは、移民問題にほとんど言及せず、まるで問題が存在しないかのようだ。その代わり、安全問題を常に強調している。そのため、移民に対する急転換や寛容さの低下が起きるとは考えていない。現代欧州の政治思想が非常にリベラルなので、欧州でこのようなことはありえない。保守党やメインストリームに抗議的な政党は現在停滞期にあり、すでに人気のピークが過ぎて支持を失っている。西側の『政治的メインストリーム』全体は左派であれ右派であれ、リベラルなパラダイムで機能している。」
ルキヤノフ氏の見解では、欧州の移民政策で何らかの根本的変化が起きるには、全く信じがたいことが起きる必要がある。これは、欧州が攻撃下に居続けるということを意味するのか?最新のニュースによると、スペインテロに関与した疑いで4人が逮捕された。残る容疑者の捜索が続いている。