経済をテーマにした市長会議では、日ロのビジネスチャンス拡大に向けた各地の様々な取り組みやアイデアが披露された。山形県酒田市は、啓翁桜をハバロフスクに出荷した事例を紹介した。これはロシアで国民の休日になっている3月8日「国際女性の日」をターゲットにしたものだ。ロシアでは、この日に男性が親しい女性に花を贈る習慣があり、一年のうちで最も花が売れている。ロシアには花屋は多いものの、小売されている花の種類は多いとは言えない。啓翁桜は、国際女性の日の定番であるチューリップよりも高値だが、その美しさと珍しさで、いつもと少し違うプレゼントをしたいと考える男性のニーズに合致した。ハバロフスクのみにとどまらず、2016年からはサンクトペテルブルグにも出荷を始めている。
新潟市とロシア極東との農業分野での協力についても報告がなされた。新潟大学は2014年から、ウスリースクの国立沿海地方農業アカデミーと、遺伝子組み換えではない大豆の試験栽培を協力して行ってきた。日本の技術を用いてロシア極東で大豆が栽培されれば、それを日本に逆輸入するという可能性も大いにある。現在、この大豆を使ってどんな食品に加工するのがよいか、検討が進められている。また、富山市も、現在特産化を進めているエゴマの栽培を通して、ロシアと協力できるのではないかというアイデアを披露した。
観光交流促進も大きなテーマだ。今年に入りロシア極東から日本への個人旅行者は大幅に増えており、ウラジオストクから成田・関空へ直行便が飛んでいるが、日本海側の都市との直行便はない。ロシア側は、ロシアの大自然を満喫できるエコツーリズム、または工場やダム等を見学する産業ツーリズムに力を入れている。ウラジオストクのカニ祭りのように、ご当地グルメを楽しむ趣向のイベントもある。しかし、極東の魅力が日本人に周知されているとは言いがたい。これらの点をふまえ、共同声明には、航空路や航路の活性化、短期渡航時のビザ取得手続きのさらなる簡素化を両政府に働きかけることなどが盛り込まれた。
ロシアから参加した市長たちは、会議後に新潟県内の視察を行なった。野菜の温室栽培施設を訪れた一行はトマトやきゅうりを試食し、その味に大満足。ロシア極東における冬季の野菜供給は中国からの輸入に頼りきっているため、日本の技術を用いた温室栽培は関心が高い。例えばハバロフスクの経済特区にある合弁企業「JGCエバーグリーン」のトマトやきゅうりは、中国産とはまったく違う味で高い評価を得ており、市場に浸透している。
日ロ沿岸市長会事務局長を務めた新潟市国際課の岩渕武紀課長は、「日ロ関係が盛り上がってきている今の時期に、ロシアの皆様をお迎えして新潟で会議を開催できたことが嬉しい」と話している。次回の会議は2年後、カムチャッカ半島のペトロパブロフスク・カムチャツキー市で開催される。