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2015年ダーイシュはシリア領の50%(70%とするデータも)を支配していたが、2017年10月までに支配領域はシリア領のわずか19%に減少した。直近の2ヶ月だけで600ヶ所以上の居住地が解放された。同国最大規模の都市で最も重要な戦略地点の1つであるアレッポも解放され、14万人が帰郷できた。
スプートニクのインタビューに対してベトナムの軍事専門家レ・トゥへ・マウ上級大佐が、シリアの紛争におけるロシアの役割について次の見方を示した。
「シリア危機は21世紀で最も熾烈な政治的対立のポイントの1つだ。そのため、ロシアの軍事作戦の成功は中東における新たなパワーバランスを生み、テロとの戦いだけでなく、世界におけるその他一連の地域的危機の解決に対する影響の度合を高める。例えばそれは、朝鮮半島で核危機が非常に危険にエスカレートすることを防止することだ。さらに、ロシアはイランとトルコとの同盟形成で鍵となる役割を果たし、アスタナでシリアに関する国際会議への道を開いた。会談の、ブレークスルーとなったもっとも重要な結果はシリアでの停戦だ。ロシアは自らの側に一連の諸国を引き込んだ。それには、NATO加盟国で以前はシリアのアサド大統領退陣の急先鋒を務めていたトルコですら含まれる。特筆すべきなのはまた、イラクやリビア、アフガニスタンが、ロシアが実際にこの悪を撲滅するための闘いの最前線にいると納得して、テロとの戦いにおいて彼らにも協力するよう提案してきたことだ。」
現在、シリアは複数の軍事・政治勢力がコントロールしている。それはロシアの支援を受けたアサド政府とイランや親イラン勢力、そして米国の支援を受けたクルド人、トルコとシリア系トルコ人の支援を受けた反体制派の自由シリア軍、最後にダーイシュとその同盟テロリストの4つだ。そのため観察者が見るように、ダーイシュに解放されたシリア領の大半でさえ統一された国家だと見ることは楽天主義の極みだ。シリアの領土的一体性は軍事的方法によってすら保証されておらず、政治的解決について口にだすのは時期尚早だ。紛争の当事者勢力全てのコンセンサスが不可欠だ(もちろんダーイシュ抜きだが)。だが、これを近い将来に達成できるとは考えにくい。
そのため全ての当事者が望まなくても、シリアの非公式な分割状態はまだまだ長く続くだろう。シリアの未来について当事者の意見があまりに異なっていて、戦後シリアにおけるその目的と課題があまりに異なっているのだ。
また、シリアで活動している外国軍がまもなくシリアを離れるということも考えにくい。これはおそらく、ロシアのシリア駐留軍にも関わる。シリア駐留軍は中東全体のロシアとシリアの国益を守り続けていくだろう。