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ロシア人専門家らは、北朝鮮の核攻撃がどんなに「成功」したとしても犠牲者の数はこれよりずっと少なくなるはずだとして、こうした試算には納得を示していない。ロシアの戦略情勢センター、最北端アジア軍事研究プロジェクトの専門家ウラジミル・フルスタリョフ氏は、「この試算は多くの要因を見過ごした雑な当て推量とみなす根拠がある」と語っている。フルスタリョフ氏の指摘では、ザグレク氏は攻撃が軍事基地ではなく、首都の中心部を直撃した場合を想定して試算しており、それを北朝鮮の核保有は敵国の軍産および経済ポテンシャルを破壊するには十分な力を持っていないことに動機づけている。このため北朝鮮には都市を攻撃する以外にないというのだ。
このことから北朝鮮が最大都市だけを攻撃するなど、単に想定であってもすでに信頼を欠いている。確かに軍事基地への核攻撃は近隣の居住区にも及ぶであろうし、特に沖縄でこれが顕著となるだろうが、それでも犠牲者の数はザグレク氏の予測よりはずっと少ないはずだ。フルスタリョフ氏は、ザグレク氏は重要なファクターを考慮に入れていないと指摘する。
「まず日本、韓国の巨大都市では昼夜によって、また季節ごとに人口が大きく異なる。ということは同じ場所を攻撃してもそれがいつ行われるかによって犠牲者の数には大きな違いが生じるということだ。」
大都市を攻撃するというのは、時間帯によって犠牲者数が大きく変わるため、軍事計画には旨みが少ない。核攻撃は、敵が待ったを言わせてはくれない以上、いつ何時も行える状態になければならない。このため標的も、計画の上での損失が時間帯、天候など変化する条件の如何に依らずにかならず達成されるようなものでなければならないのだ。
「第2に今の都市は1945年当時の日本の都市の様相とは違う。このため、衝撃波も、現代のコンクリート建築にあふれた町ではずっと小さくなるはずだ。」
今の東京もソウルも頑丈で耐震構造の鉄筋コンクリート建築が大半を占めており、核爆発とて、これを壊すのは容易ではない。それに都市には地下の歩道や駐車場、カプセル状の歩道橋、地下鉄などシェルターとして使うことのできる場所が少なくない。
もちろん奇襲というファクターを除外してはならない。それでも専門家らからは、根拠不十分で脅かすような試算を公表するのではなく、入念なモデリングを行う必要性が指摘されている。どんな予測もモデリングもせず、核爆発で起こりうるあらゆる条件やファクターも考慮せず行えば、不確かさが増すだけだ。あてずっぽうの予測でイライラやパニックを起こせば、それこそ北朝鮮の思うつぼになってしまう。