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アジア地域の国々で核兵器が拡散する可能性は、朝鮮半島の核・ミサイル問題が取り沙汰されるようになった初期から言われていたことだ。各国が核を持つという事態発展のシナリオは、北朝鮮の核兵器保有がまだ疑惑の域を超えておらず、同国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発計画などは真面目な議論の対象にもなっていなかった時期から既に存在していた。今や北朝鮮が核攻撃で米本土西海岸のロサンゼルスも標的にできる可能性を手に入れようとしているとき、この筋書きはより緊急性を帯びてくるだろう。
米国の雄弁な外交政策は、ことこの数ヶ月間の朝鮮半島核問題においては、外交発展国のものとはますます似つかわしくないものになりつつある。しまいには、敵に壊滅的攻撃を与えて地上から消し去るという北朝鮮側の脅迫発言と鏡写しになる始末だ。
北朝鮮情勢の緊張が高まる中、トランプ氏は10月13日、オバマ前政権の遺産(レガシー)だったイランとの2015年核合意を見直す姿勢を表明した。これは北朝鮮に対し、米政府と交わすあらゆる取引が次政権では反故になる可能性を自ら露呈する結果ともなった。
仮にこのシナリオが成立した場合を考えてみよう。北東アジア地域を構成するのは5つの核保有国(ロシア、中国、北朝鮮、日本、韓国)となり、同地域で今まで米国が演じてきた役割は不要となる。核保有国間に築かれた新たな勢力関係の中で、米国の安全保障はどの国にとっても全くの無用とはならないにしても、従来ほどの影響力は失われてしまうだろう。日本や韓国は同盟国であり続けるだろうが、米国が占めてきた優位性は損なわれる。経済面においても、各国は米国との関係よりも地域内の国々との関係を重要視するようになると考えられる。この重要な地域で米国が影響力を失った結果、最終的には世界全体における同盟体制の弱体化にも繋がるだろう。果たして現在の米政権は、このような事態の発展を予見しているのだろうか。そしてこれを未然に防ぐ意志があるのだろうか。