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もしかすると安倍首相はハッと我にかえって、選挙前までとは違う態度をとり、今回の有権者からの信任を、日本外交における別の目的のために、チャンスとして利用するのではないだろうか?
ロシアの歴史家で日本専門家でもあるアナトーリー・コーシキン氏は、「領土問題でロシアに譲歩を求めることは、おそらく、安倍政権の長期的戦略として残るだろう。安倍氏はこれからも自身の外交政策を作り上げていく」と考えている。
ロシア科学アカデミー・極東研究所、日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長も、コーシキン氏に同意する。
外交・防衛政策会議議長のフョードル・ルキヤノフ氏は「安倍氏の政策はロシアと妥協案を見つけ、現実の成果を出すということに集約している。2021年に安倍首相は、実りのない交渉ではなくて、何か具体的なものを示さないといけなくなるだろう」と話している。
安倍氏によって提示されたロシアとの経済協力プランは、期待したほどスムーズにではないにしても、安倍氏とプーチン氏が会合するたび、具体的な項目が出てきている。11月のハノイにおけるAPECで、両首脳の会談回数は20回に達する。
しかしハノイで議題になるのは、なんと言っても北朝鮮のミサイル開発の問題だろう。日本にとって外交上の重要問題であり、これに対する安倍氏の姿勢は一貫している。
キスタノフ氏「安倍氏はロシアと中国に、どんなわずかな関係も断絶し、北朝鮮を経済面で完全に孤立させるよう説得するつもりだろう。特に北朝鮮への石油供給だ。おそらく安倍氏はハノイのAPECで、プーチン氏にこのことを話す。安倍氏が衆院を解散したのは、自民党が勝利した際に対北朝鮮政策強化の全権委任を得るためだ。そして彼はこれをすぐに実行する。彼は、二本立ての「圧力と対話」を並行させるやり方はすでに古いとみなしている。対話の時間は終わり、圧力をかけるしかない、と。また日本には、国際社会が共同で制裁を強化するようにすべき、という圧力もある。米国との同盟を利用し米国による軍事圧力を、ということになるかもしれない。つまり北朝鮮をおびえさせることで、トランプ米大統領を完全に後押ししているのだ。」
キスタノフ氏は、日露首脳の北朝鮮政策には乖離があるものの、そのことが日露関係に直接影響を及ぼすわけではないと考えている。ロシアも、国際社会の一員として、他国同様、北朝鮮のミサイル実験や挑発を非難している。ただプーチン大統領には米国と違うアプローチがあるのだ。
ロシアの対北朝鮮制裁によってロシアと北朝鮮間の科学技術協力の凍結、ロシアの銀行の支店やその他機関の事務所が閉鎖される。また制裁では核プログラムに関与している北朝鮮の船舶がロシアの港に入ることを禁じている。
ハノイの会談で日露首脳は双方とも、自国の北朝鮮政策の正しさを相手に説得するような形になるだろう。9月19日、国連事務総長のアントニオ・グレーテス氏は「これは成熟した制御・運営のための時間だ。戦争をする方向に突っ走ってはいけない」と述べ、北朝鮮に対する新しい制裁は、国際社会が武力闘争なしで問題を解決したいという願いをあらわしているのだと強調した。