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ロシア水文気象環境監視局地勢センター責任者のユーリィ・ヴァラキン氏は「スプートニク」のインタビューに対し、本件報告の公開が遅れた理由は、各観測地点からのデータ到達にばらつきがあり、その後分析にかけ、確認と再確認の作業を経ていたからだと説明する。
「今ではルテニウム106のレベル上昇が検出された場所がチェリャビンスク州だという見方になっている。ここには核物質を扱う『マヤーク』施設がある。だが我が局では放射線汚染源の特定には携わっておらず、同局が管理する観測地点から得られる数値を記録、確認、分析しているだけだ。また、このようなレベル上昇はほぼ同時期に他の国々でも認められていることは述べておきたい。しかし、どれほどのルテニウム濃度が住民に危険なのか、或いは安全なのかについても、我々の局では評価できない。これは他の機関の管轄だ」
「大気中のルテニウム106の放射能数値の上昇は、同時期に西欧諸国やタタルスタン、ヴォルゴグラード、南ウラルでも記録されており、その数値も10〜20ミリベクレル/立方メートルのレベル内で共通している。特に高い濃度が観測されたのは、我々の『マヤーク』施設より約3千kmも離れたスロバキアとルーマニアだ。また施設内では、使用済み核燃料から放射性同位元素のルテニウム106を分離する作業はもう何年も行っていないことも併せてお伝えしておきたい。ルテニウム106による大気汚染に関して公開された情報を見れば、人体が受ける放射線量は年間許容線量の20分の1であり、人間の健康や生命に危険が及ぶものではないとの結論を導くことができる」
毒性学研究所のアレクサンドル・グレベニュク教授は、放射性同位元素のレベルは過去の計測値ではなく、具体的な許容基準値と比較すべきだと主張する。臨界値まで上昇した際には必要な措置が取られるからだ。
この都市(チェリャビンスク市)およびこの施設(マヤーク)では、明確な放射線安全システムが存在している。仮に同施設から放射線漏れが発生し、ルテニウム106のβ線レベルが基準値を超えていれば、避難などの防護措置が取られていただろう。そのような措置がなかったということは、レベル上昇もなかったということだ
グレベニュク教授によれば、同施設内で異常事態を隠蔽するような者は誰もいないという。
チェリャビンスク州のエヴゲーニィ・サフチェンコ公安相の説明によると、州政府からロシア水文気象環境監視局とロシア国営原子力企業「ロスアトム」に対してバックグラウンド線量に関する照会を行ったところ、線量の変動はあったものの危険レベルに近づくことはなかったとの回答が得られたという。サフチェンコ氏は「政府職員もその家族も、放射性物質に耐えられるような『予防接種的な処置』を受けているわけではない。だから仮に危険な情報を隠蔽して人々の救済措置を取らないとすれば、それは完全な馬鹿者に違いない」と強調する。
1986年4月26日にチェルノブィリ原発事故が発生したとき、ソ連当局はこの情報を世界のみならず自国民にも隠蔽しようと試みた。住民には事故の事実さえも知らされず、もちろん避難が呼びかけられることはなかった。キエフでは5月1日のメーデーの行進や集会、コンサートなどの屋外イベントが例年のように行われた。それ以降、「放射能」という言葉が記されたあらゆる情報に人々が不安を抱くようになったのは、全く理解できることだ。だからこそ、政府には納得できる説明や明確な安全保障対策が求められている。