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今年既に実施されたものとは違い、今回の演習には航空戦力を重視する姿勢が表れている。韓国国防省はあらゆる天候のもとで昼夜問わずあらゆる時間帯に航空戦力の共同行動を実現するための訓練を行うとしているが、演習計画は普段通り機密扱いとなっている。ただ、演習で何の訓練が行われるのかについては、投入された航空兵器の構成から判断することができる。今回、参加する最新鋭機の数は比較的少ないが、それでも戦闘行動の遂行に不可欠な出撃を実際的な状況で訓練することはできる。
戦略爆撃機「B-1B」は誘導爆弾から核兵器まで、幅広い種類の武装を装備できる。ただし、第二次戦略兵器削減条約(STARTⅡ)の対象となったため、現在配備されている機体には全て核兵器搭載能力がない。B-1Bは既に何回にもわたって朝鮮半島上空で訓練を行っている。第5世代戦闘機と電子戦機の登場が新たな試みとなる。これら新たな機種の登場こそが、今回始まった演習の意図をかなりよく反映しているのだ。
「F-22」は、制空権確保と空域の完全な掌握を任務とする戦闘機である。逆探知を避ける低出力の周波数での索敵能力を持つレーダー「AN/APG-77」を搭載し、また半径460キロ圏内のあらゆるレーダー電波を探知、記録、追尾できるレーダー警報受信機「AN/ALR-94」も装備している。このシステムにより、F-22は敵戦闘機や地上の迎撃ミサイルシステムのレーダーに発見されることがない。別の言い方をすれば、F-22は自らを発見する可能性を敵機に与える前に、その敵機全てを目にすることができるのだ。パイロットは目標を自ら破壊することもできるし、他の航空機を目標に案内することもできる。
朝鮮半島上空におけるもう一つの新たな兵器が、空母艦載の電子戦機「EA-18G」である。「F/A-18F」を基に開発されたものだが、価格はより高く、1億百万ドルとなっている(ベース機は6600万ドル)。米国に114機、さらにオーストラリア空軍に12機が導入されている。2011年3月23日に実戦に投入され、リビアでの防空システム制圧と同国上空での飛行禁止空域設定に5機が参加した。
以上から、今回の演習は最早、北朝鮮によって行われる可能性のある攻撃があった場合の防衛を目的とした性格を持ってはいないとの結論を出すことができる。司令センターや通信拠点、ミサイル陣地といった最重要施設の破壊、防空システムの制圧、空あるいは地上における北朝鮮航空戦力の殲滅、さらに地上に降下あるいは上陸した部隊への空からの支援も想定した、北朝鮮に対するれっきとした空からの攻撃のための訓練なのだ。これは政治的には、北朝鮮による挑発に対する答えとして提示されているのかもしれないが、それにもかかわらず、純粋に軍事的観点から見れば、敵に勝算を残すことのない空からの攻撃のためのものなのだ。