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これに先駆けウラジオストクでは農水省の主催により、9月7日から10月27日まで有名ラーメン店4店によるテスト出店が行なわれていた。4店が10日間ずつ交代で営業し、ラーメンという料理を知ってもらうとともに、食べくらべの機会を提供したのである。その後2か月も経たずして、早くも常設店開店が実現した。みそ・しょうゆ・塩といった定番メニューのほか、キムチラーメンや、餃子・チャーハンといったサイドメニューもある。
首都・モスクワでは日本食レストランの質は玉石混交で、時々「ラーメンのようなもの」を見かけ、がっかりすることがある。その点今回の新店では、麺、スープ、スープの味を決める「たれ」は全て日本からの輸入だ。日本で修行したロシア人従業員が厨房に立っており、オリジナルの味が最大限再現されている。「麺や琥張玖」の代表、鷲田芳実(わしだ・よしみ)さんも、毎月1回のペースで札幌からウラジオストクに足を運ぶ予定だ。
この店のユニークさは、ラーメン店としての機能だけにとどまらず、日本グルメの可能性を探る実験基地という役割を兼ねている点にある。日系企業のロシア進出をサポートしている北海道総合商事の子会社「ペガスHC」の池田英希社長によれば、ロシア進出を検討する日本企業からオファーがあれば、ロシアの商習慣やロシア人の反応を知るための試験営業の場として、店を貸し出す予定だという。来年にはモスクワにも同様の拠点を作る計画がある。これにより、会社を立ち上げたり、自力で店を構えたりしなくても、生の市場調査ができるようになるというわけだ。もしかするとラーメン店は、期間限定で牛丼店やうどん店になるかもしれない。
ここ数年で、東日本大震災後の恩返しをテーマに始まったサンクトペテルブルクの「ヤルメン」や、シベリアのレストラン王が日本人の妻のために手がけたモスクワの「クウ」など、日本ラーメンが食べられる場所が徐々に広がっている。ロシアにおけるラーメンブームは、これからが本番だ。
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