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今年10月中旬、遺伝子治療の幅広い利用を求める活発な活動家ゼイナー氏は左腕に、筋肉の成長を抑制するたんぱく質「ミオスタチン」の分泌を抑制するDNAを注入。その様子を映した動画はユーチューブに公開されている。英紙ガーディアンによると、注入したDNAや化学物質は、筋肉量の大幅な増加を伴う細胞の遺伝的変化を引き起こすように設計されているという。ゼイナー氏は、人間が常に遺伝子の奴隷であったと指摘し、誰もが自身の遺伝子をコントロールし、改造する可能性を持つべきだと主張する。
ゼイナー氏の行動は学者からの非難を引き起こした。学者らは、こうしたアマチュアによる注射は予期した結果をもたらさずに、悪影響を及ぼすおそれがあると警告する。一方、遺伝子治療自体は医師と生物学者の間で、よりいっそう大きな関心を引き起こしている。今年10月、モスクワで開かれた第1回学術カンファレンス「Biotechclub-2017」では、『遺伝子編集の未来:許可の境界はどこに?』というテーマが激しく討論された。学術研究企業「Parseq Lab」のアレクサンドル・パブロフCEOによると、ヒトの遺伝子編集は医学的理由からのみ行われるべきであり、「理想的な兵士」などの「スーパーマン」を作り出すためにヒトを身体的ないし心理的に発達させることを目的に行うべきではない。そして、倫理的問題以外にも問題はある。
パブロフ教授は「たとえ今日、例えば筋肉が発達したヒトを作り出すことができたとしても、その人間の心血管系は他の臓器系同様、依然変わらないままだ。総じて我々の前には病気の人間が現れることになる」と警告する。