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東京の写真展という企画は、これまでに国内外で200ほどの展覧会を企画した経験を持つ写真家でアートディレクターのアンドレイ・マルティノフ氏によるもの。スプートニクのインタビューに対し、数年がかりの同プロジェクトについて語ってくれた。
「他のプロジェクトですでに知り合いだった作者もいれば、初めて知り合った人もいます。日本には何度も訪れたことがあり、そのたびになにか新しいことを発見しました。幸運にも東京を訪れた人には、頭の中からこのファンタスティックな町を捨て去ることは困難です。この町の多様で珍しい感覚に満ちた生活に浸るため、つい何度も何度も戻りたくなります。日本に友人が多く私は運がいいです。その方々のおかげで私は何人かの日本の芸術写真家と直に知り合うことができました。彼らの作品はここに展示されています。写真の選抜や作者との交渉、コンセプト作成など、プロジェクトには2年以上かかりました。写真の範囲は30年におよび、1980年代の写真から2016年の写真まであります。展覧会は東京の全景を示すことは目指しておらず、他の歴史やストーリーが多く隠れている垂れ幕を少し開くに過ぎません。」
東京藝術大学美術学部教授である佐藤時啓氏は現代日本の最も有名な写真家の1人であるが、この展覧会には「煙光」と題した題名のシリーズを展示する。これは、佐藤時啓氏の光学的技術の1つで、佐藤時啓氏かその助手が写真撮影中に特別な光の棒で空中に描く光の模様だ。その写真はまるで魔法。
佐藤信太郎氏は「Tokyo Twilight Zone」という一連の作品を展示。ここでは佐藤信太郎氏のテクニックにより、特別な色調のもと都市景観の美しさが映し出されている。
小川康博氏はその一連の作品「東京の静けさ」で静寂を評価するよう呼びかける。写真の下には「東京とは賑やかで混沌とした都市である。だがそこにはストレンジ・サイレンス(奇妙な静けさ)がある」と書かれている。確かに、東京のような大都市には静寂はめったに訪れない。交通機関の騒音、カフェやレストランの音楽、客引きや広告の叫び声がある。そのため、貴重な沈黙の瞬間はより価値あるものになる。スプートニクのインタビューに対して小川氏は、初めてみたときには自身の写真は鬱屈として見えるが、実際には1人でいて、思索を巡らせる貴重な機会なのだと述べた。
小川氏は東京における騒音と静けさについて、「東京の賑やかさは人工的な賑やかさ(artificial noise)だ。歩いている人々は声を上げておらず、ラウドスピーカーなど人工的なものを抜くと、静かな街なのではないかという印象がある」と述べた。さらに、悪い印象ではないとしつつ、大都市で「人々が話さずに歩いていることが不思議」だと指摘した。
また、近年はiPhoneなどスマートフォン搭載のカメラが発達しており、プロではない人々も頻繁に写真を撮るようになった。スプートニク特派員が、プロと一般の人々の写真の違いについて質問すると、小川氏は一般の人々にも面白い見方があるとした上で「プロの写真家は普通とは違ったものの見方を持つ必要があるという意識が強い」と述べた。
展覧会「東京ストーリーズ」は3月まで開かれる。企画者らは、これらの写真は訪れた人々が新たな目で東京を覗きこむことを可能にし、自身の目でこの驚くべき町を知る願望が目覚めさせると確信している。