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平和・安全保障研究所の西原正(にしはら・まさし)理事長は、「北朝鮮への抑止効果を考えれば、NPRは地域の安定に寄与するだろう」と話す。
西原氏「米国は大型核爆弾を保有していますが、北朝鮮は『米国があんな大規模な核兵器を使うはずがない』と想定し、米国を軽く見ています。その状況を変えたいというのが米国の目的でしょう。北朝鮮が核または通常兵器でもって、米国や周辺国に攻撃をするかもしれないという状況の中、米国が小型核爆弾を作り、それを使うというメッセージを北朝鮮に与えることは、抑止力になると思います。反面、『米国が核使用の準備をするなら、我々も』と考える国が出てきて、一種の軍備競争を促すのでは、という懸念もあります」
戸崎氏「オバマ政権時のNPRでは、核兵器の役割と数を減らしていく、とはっきり表明していましたが、今回は『核の役割や数を減らす10年にわたる米国の努力にもかかわらず、他の保有国は安保政策における核の優位性を増してきた』と述べています。米国はこの文言によって、これ以上自分たちの核の役割を減らすことはないと示唆しているのでしょう。いっぽう、核の先制不使用に関しては、オバマ政権時のNPRにおいても述べられていませんでした。表現こそ違えど、核の先制使用を否定しないという意味では、政策的には継続されています」
新NPRでは、ロシアや中国の核戦力の増強、北朝鮮による核開発により、世界の脅威が増していると指摘されている。
リスクの大きい国として名指しされた中国は、「米国の新核戦略には根拠がない」として批判を展開している。中国・西南大学イラン研究センター長代理の陳俊華(Chen Junhua)氏は言う。
ロシアもまた、「NPRは反ロシア的であり、核武装競争のスパイラルを展開する」と批判している。ロシア高等経済学院総合ヨーロッパ・国際研究センター研究員で軍事評論家のワシーリー・カーシン氏は、「冷戦時代を彷彿とさせる」として次のように話している。
スペインの国際政治学者ハビエル・ウガルテ(Javier Ugarte)氏は、不安定化する世界情勢に懸念を示し、核保有国に自重を呼びかけている。
ウガルテ氏「米国の目的が、単に『脅かす』ことだとわかっていても、今回のNPRは不安を呼び起こすものです。重要なのは冷静な頭で行動すること。世界の全ての国が、軍拡競争をしないように自分を抑え、交渉によって新しい合意を達成することがとても大事です。NPRの中で脅威として名指しされた国は、一致団結して一つの大きい勢力になるべきではないでしょうか。そうすれば米国も無視できず、対話のテーブルにつくことになるでしょう」