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タイは無国籍者問題の解決における地域のリーダー。過去10年間で約10万人に国籍を付与。2024年までには、さらに48万人の無国籍者の問題を解決する方針だ。これは主に遠隔地や国境付近の地域に住み、出身国とのつながりを失った人びと。彼らは国籍付与の流れに関する詳細を知らない。だが、国籍を持たない彼らは高品質な医療・社会的援助や不動産の所持、自由な移動、教育などの権利がない。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のキャロル・バッチェラー特別顧問が出した声明はこうした状況を受けたもの。
UNHCRのまとめでは、世界の1100万人が無国籍だと推定される。うち350万人(40%強)はアジアに住んでいる。これはタイの民族的少数派や、ネパールのブータン人、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ、シリアやイランのクルド人である。また、東西欧州に住むロマ(ジプシー)や、以前の居住地を離れた旧ソ連市民などもいる。
ロシア内務省のまとめでは、ロシア国内には数万人の無国籍者がいる。2019年6月から、15年以上ロシアに住み、改正国籍法を満たす人は、簡易化された手順でロシア国籍を入手できる。
日本にも無国籍者はいる。ただし、推定人数はデータにより大きく揺れがあり、600〜1万人だと算出されている。UNCRと日弁連法務研究財団の助成を受け、無国籍研究会が昨年末、研究『日本における無国籍者ー類型的調査』を発表。それによると、日本は国内法制上、無国籍(者)の統一的定義を持たず、国際法上のその定義との関連性が明らかではない。
国籍に関する状況について、ロシア応用政治調査研究所のグリゴリー・ドブロメロフ所長から話を伺った。
「国籍の問題は基礎的で地政学的な問題だ。この数十年間は、モノ・カネ・ヒトの移動における障害を全て取り除く世界的な潮流が見られていたが、過去数年間では逆行するプロセスが確認される。国家経済は閉鎖的になり、経済製品の障害が作られている。そして同時に、人びとの自由な移動に対して国境が閉じられつつある。これは何よりも、安全保障問題、テロの脅威、もしくは制御できない難民の流入で説明される。」
「とはいえ、国籍付与の問題は常に様々な状況に左右されてきた。常に複雑で、政治的であることもままあった。バルト諸国でもそうで、以前、基幹民族(名義上国民国家の主体となる民族、Titular nation)に身分を与え、正式な「非市民」パスポートすら与えた。確かに、これらの人びとに対しては常に国籍入手の入り口が開かれてはいたが。最低限の要件は、その国の言語の習得だった。」
「タイの学生の件では私には喜びしかない『「禍福は糾える縄の如し』というわけだ。」
どの国からも自国民だと認定されない人の運命は、子どもがいる場合は特に、しばしば劇的になる。無国籍者の権利が大きく制限され、特別保留地での生活を強いられる国もあれば、選挙権や国家の要職に就く権利、軍役の権利を除いてほぼ全ての市民権を付与される国もある。