モスクワっ子、浮世絵の神髄を学ぶ【写真】

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浮世絵 - Sputnik 日本
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モスクワで展覧会「江戸時代の絵画と版画の傑作」が開催中だ。すでに6万人以上が訪れた。展覧会と並行して、展覧会の開幕前に始まった大規模教育プログラムが行われている。開かれているのは日本の歴史・文化・芸術のレクチャーに加え、墨を使った日本画や書道のワークショップ。ロシアの日本文化ファンはこの数日、大サプライズを待っていた。浮世絵木版画の職人2人が、木版画技術のレクチャー2本を行ったのだ。2人は日本の「国際交流基金」による招待でモスクワを訪れた。レクチャーのうち1つをスプートニク特派員が取材した。

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伝統木版画版元、高橋工房六代目の高橋由貴子さんと摺師の平井恭子さんが葛飾北斎の作品「神奈川沖浪裏」を例に、浮世絵の制作過程を示した。

作品の選択は偶然ではない。「神奈川沖浪裏」は9色で擦られているため、摺りに多くの時間がかからず、ワークショップに都合が良いという。高橋さんがレクチャーしたところ、版画には平均15〜30色が使われる。高橋さんの父親は900色の版画を擦ったことがある。セザンヌの絵だった。

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ロシアのオーディエンスは興味深くレクチャーを拝聴した。こう言うのは、何も言わないに等しい。浮世絵を初めて手に持った人もいた。現在、特に貴重な芸術作品だと認められ、洗練と細やかな芸術的趣味の象徴と見なされる浮世絵の制作工程が、全く芸術作品の作成らしくないと知り、アッと驚いた人もいた。江戸時代の版画の値段はラーメン一杯と同程度で、火種にするため気兼ねなく筒状にすることすらあった。

平井恭子さんのワークショップのおかげで、出席者の眼前で版画が生まれ落ちた。これは全工程で非常に高度なプロフェッショナリズムを要求する極めて複雑なプロセスだった。メインのつくり手が芸術家である板絵と違い、版画制作において結果は芸術家の腕だけでなく、彫師と摺師の能力、そして版元の才能にも左右される。現代のプロデューサーに近い版元こそが、様々な芸術家を有名に出来たのだ。

高橋田貴子さんは自身の仕事についてスプートニクのインタビューで語った。

スプートニク:この仕事を上手くするために何の性質を持たなければならないですか?

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高橋さん:好奇心、探求心、そういうのが無いと版元として務まりません。私は版元の仕事をしています。摺師と版元です。どちらかというと版元の方が今は多く、組合の理事長をやっています。皆にお仕事を企画して渡さなければなりません。そのためには好奇心や探求心が凄く大切です。ですから浮世絵ばかりではなく建築家とのコラボレーション等、そういった他のアーティスト達とのコラボレーションも色々しています。日本ではアニメも作っています。

スプートニク:高橋さんは何歳からヘッド(工房頭)になりましたか?

高橋さん:私は家が家でしたので生まれた時から父の仕事をみていました。父の後を継いだのは30半ばです。

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スプートニク:そもそもから憧れがありましたか、それとも別の職業に興味がありましたか?

高橋さん:別の仕事に就きたかった時期もありましたが、やはり父がどうかなと言ってくれたので、できるならやってみましょうという事で入りました。嫌いではないんです。好きだからできているんです。

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スプートニク:高橋さんのご家族は日本で唯一ですか?

高橋さん:いいえ、唯一ではありません。他にもありますが日本で一番古いです。続いてるという事では古いです。

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スプートニク:日本でこの仕事に好奇心を持つ人が多いですか?

高橋さん:少ないです。やはりIT産業等、若い方はそういった方に行ってしまうので木版だけではなくこういった古い仕事はなかなか後継者がこないです。

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19世紀末、浮世絵は全世界で人気を集め始めた。ロシアで初めての浮世絵展が開かれたのはサンクト・ペテルブルグ、1898年のことだ。浮世絵のコレクションはペテルブルクにあるエルミタージュ美術館、モスクワにあるロシア国立東洋美術館とプーシキン美術館が所有している。プーシキン美術館が所蔵する絵巻物と浮世絵は数千点を数える。これらは19世紀末、ロシア海軍のセルゲイ・キタエフ士官が国外に離れる前、美術館に寄贈したもの。

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