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伝統木版画版元、高橋工房六代目の高橋由貴子さんと摺師の平井恭子さんが葛飾北斎の作品「神奈川沖浪裏」を例に、浮世絵の制作過程を示した。
作品の選択は偶然ではない。「神奈川沖浪裏」は9色で擦られているため、摺りに多くの時間がかからず、ワークショップに都合が良いという。高橋さんがレクチャーしたところ、版画には平均15〜30色が使われる。高橋さんの父親は900色の版画を擦ったことがある。セザンヌの絵だった。
平井恭子さんのワークショップのおかげで、出席者の眼前で版画が生まれ落ちた。これは全工程で非常に高度なプロフェッショナリズムを要求する極めて複雑なプロセスだった。メインのつくり手が芸術家である板絵と違い、版画制作において結果は芸術家の腕だけでなく、彫師と摺師の能力、そして版元の才能にも左右される。現代のプロデューサーに近い版元こそが、様々な芸術家を有名に出来たのだ。
高橋田貴子さんは自身の仕事についてスプートニクのインタビューで語った。
スプートニク:この仕事を上手くするために何の性質を持たなければならないですか?
スプートニク:高橋さんは何歳からヘッド(工房頭)になりましたか?
高橋さん:私は家が家でしたので生まれた時から父の仕事をみていました。父の後を継いだのは30半ばです。
スプートニク:そもそもから憧れがありましたか、それとも別の職業に興味がありましたか?
高橋さん:別の仕事に就きたかった時期もありましたが、やはり父がどうかなと言ってくれたので、できるならやってみましょうという事で入りました。嫌いではないんです。好きだからできているんです。
スプートニク:高橋さんのご家族は日本で唯一ですか?
高橋さん:いいえ、唯一ではありません。他にもありますが日本で一番古いです。続いてるという事では古いです。
スプートニク:日本でこの仕事に好奇心を持つ人が多いですか?
高橋さん:少ないです。やはりIT産業等、若い方はそういった方に行ってしまうので木版だけではなくこういった古い仕事はなかなか後継者がこないです。