スプートニク日本
毎日、およそ300トンの地下水が福島第1原発の裏山から太平洋の方向に流れてくる。ところがこの水は最終地点に到達する前に事故にあった原子炉に流れ込み、そこで放射能物質と交わって汚染されてしまう。事故から7年たった原発でこれは最も重い問題のひとつとなっている。
浄化装置「ALPS」は質量数の重いセシウムやストロンチウムをはじめとする62種類の放射性同位体を水から除去することができるが、トリチウムは取り除くことができない。浄化された水の一部は原子炉の冷却化に用いられ、残りは特殊なタンクに詰められ、保存される。そうしたタンクの容量は合わせて97万立方メートル。朝日新聞の試算では、この装置で年間5万から8万トンの水が浄化されている。2017年の時点ですでに専門家らは、そのうち汚染水を保管する場所などなくなると危惧を表してきていた。
今回のIAEAの専門家らも福島第1原発の検査後、同様の帰結に達した。専門家らの意見では貯蔵庫は3-4年内に限界にまで達する。このため日本政府と原発の株主らはこの問題の解決に早急な解決措置を取らねばならない。
IAEA専門家委員会のクリストファー・ヘリー委員長は東京での記者会見で「現段階で日本政府には(汚水の浄化に)5つの方法を有しているが、そのうちのどれを使うかを決めることができるのは政府と株主らだけだ」と指摘している。
委員会のレポートでは汚染水の除去を可能にする5パターンのシナリオが紹介された。1つは地下に流す。2つめはコントロールした状態での太平洋への廃棄。3つめは、スチーム状での放出。4つめは水素の形でのリサイクル。5つめは水素の形で凍結してリサイクルした後、地中に埋める方法だ。
だがこれらの方法のいずれかをとるとしても、水は前もって第2段階の浄化を行わねばならない。検査によって、ALPSを通しても、やはり水にはトリチウムだけでなく、数種類の放射性同位元素が残されていることが明らかになった。
IAEA専門家らは、汚染水の浄化方法の選択が即刻行われなかった場合、これは原発解体のプロセスそのものを凍結してしまいかねないと指摘している。
問題解決は世論の抵抗にあって難航している。IAEA専門家らは、世界で通常とられている方法は処理水の海洋への放出をコントロールして行うことであり、これは多くの発電所で採られている方法と説明している。原子炉からの水を太平洋に放出する意図は経済産業省、東電の公式レベルでも明らかにされており、トリチウムを含んだ水でも人体に大きな害はもたらさないとされている。ところが住民、漁民の多くはこの方法に反対しており、8月に行われた説明会では福島県の住民の14人に13人は異議を唱えた。
福島住民の声には国際社会からも反響があげられた。2017年12月末、ロシア外務省のマリア・ザハロワ公式報道官は「日本政府は放射能汚染水の海洋投棄を禁じ、福島原発事故で生じた廃棄物の安全なリサイクル手段を見つけるべき」とする声明を表した。ザハロワ報道官は、日本に必要な技術がない場合、外国に助けを求めるよう提案している。
ロシア人研究者らの調べでは溜まった汚染水の完全浄化は6年で出来る。にもかかわらず、イノベーション開発プロジェクト事務所「ロスRAO」のセルゲイ・フロリャ所長はスプートニクからの取材に、日本は結局ロシアの開発を未だに採用していないとして、次のように語っている。
「液体の放射性廃棄物からトリチウムを除去する技術プロジェクトを我々は去年、完成させた。ところが日本側は今現存する除去方法のどれをとるかについて、まだ最終決定がとれていない。つまり問題は残ったままだ。しかも日本はおそらく海洋放出の方法を検討するだろうといった。とはいえ最終的な決定はまだ出ておらず、彼ら箱の可能性を調査し続けている。」
IAEAの専門委員会のレポートの完全版は2019年1月に発表される。