スプートニク日本
会談の前向きな成果としては、両国首脳による、平和条約締結に向けての交渉を促進させようという姿勢が挙げられる。2019年1月、安倍首相はロシアを訪問すると表明。さらに、両国の外務大臣を平和条約締結問題の交渉責任者とする新しい枠組みをつくり、ロシア側はイーゴリ・モルグロフ外務次官が、日本側は森健良(もり・たけお)外務審議官がそれぞれ国のトップの特別代表となる。
リスクを取ることになるのは安倍首相も同じで、それは政治生命をかけるレベルのものになる。なぜなら彼のしようとしていることは従来の「四島返還」から逸脱するものであり、日本の世論にとっては、外交の失敗であるばかりか、国家利益の裏切りだと受けとめられるかもしれない。
ちなみに、今回の会談に先駆けて、11月14日にもシンガポールで日露首脳会談が行なわれていた。産経新聞は、「3年以内に平和条約締結へ」と期限を明示して報じていた。
しかし、ロシア科学アカデミー極東研究所・日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長は、まだ両者の溝は深いと見ている。
元外務次官で、現在はロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所の研究員であるゲオルギー・クナーゼ氏は、平和条約締結問題にはもうひとつ重要な面があるとし、両首脳が交渉を急ぐ背景には中国の存在があると指摘する。
クナーゼ氏「プーチン氏は、ロシアの対極東政策において中国があまりにも影響力を持ちすぎていることを良しとせず、バランスを取らねばならない立場にあります。いっぽうの安倍氏は憲法9条改正の熱烈な支持者であり、この数年の間に、安倍氏の尽力により日本が9条に対する姿勢を見直すという可能性もあり得ます。そして軍事費の割合が、NATO諸国のスタンダードであるGDPの1パーセントに対して、日本は2パーセントにも達するかもしれません。もしそうなると、中国は強烈に反応してくるでしょう。この場合日本にとっては、ロシアが中国と連携し過ぎないようにしてくれることが大事になります」