スプートニク日本
ルーザはモスクワから西に110キロ、人口は約1万3000人。同名のルーザ川が流れており、ロシアでトップクラスの水泳場がある「水の町」だ。
23日のイベントを主催したのは、ルーザ市の文化・芸術センター。同センターを拠点として活動するルーザ市の市民劇団が、演劇と音楽を組み合わせた催し物を企画した。
日露戦争の日本海海戦で損傷し、和木の真島沖に漂着したロシア・バルティック艦隊の運送船「イルティッシュ号」の乗組員265名を、和木の住民が献身的に救助したという史実。
この実話をもとに地元の市民団体などが制作した絵本には、ロシア語と英語の翻訳が付いている。ルーザの市民劇団は、この翻訳をもとに作品をつくった。ナレーターが時代背景やあらすじを語り、若い俳優たちが台詞なしで演技をし、舞台に設置されたスクリーンに「砂を使ったアニメーション」でイメージを描き出した。イルティッシュ号の絵本の挿絵も背景として使われた。
初めにロシアと日本を擬人化した女性2人が登場し、それぞれの国を動きで表現、2人は手を取り合い一緒に踊り始めるが、次第に険悪な雰囲気になる。黒い衣装を着た男たちが現れ、ロシアと日本の戦いが始まる。この後ナレーターが日露戦争の勃発、イルティッシュ号が日本海海戦で被弾し、真島沖に漂着したことを語り、和木の住民が、敵国であるにもかかわらずイルティッシュ号の乗組員を懸命に救出する場面が演じられ、最後に皆が仲良く手を取り合って幕となった。
和木の人々の人間愛、勇敢な行動にロシア人たちは感動した。涙を流した観客もいたという。なおこの作品では、「イルティッシュ号」という題名の歌がピアノの伴奏で歌われた。これは、その祖先が和木の村をつくったという小川敬子さんと小川斉子さんがそれぞれ作詞、作曲したもので、日本海に面する和木の風景、和木町沖に沈没したイルティッシュ号、その乗組員を住民が救った話が美しいメロディーと詩で描かれている。ピアノ伴奏は、ルーザに住むピアニスト、クセニア・ブリンコーヴァさんが演奏し、歌は日本人の男女2人が担当した。その一人は、モスクワ・ジャパンクラブの岡田邦生事務局長だ。岡田氏は、バリトン歌手としても活動しており、プライベートでも日露友好のために尽力されている。
ロシア人と日本人が協力してつくった「イルティッシュ号の来た日」は、演劇、踊り、ナレーション、砂アニメ、照明、音楽がとてもうまく組み合わさった作品となった。ルーザ市の文化・芸術センターは、来年3月に日本をテーマにしたもっと大きなイベントを予定しており、「イルティッシュ号の来た日」をさらに練り上げ、3月のイベントでもう一度、日本とロシアの友好の史実をルーザの人々に伝える計画だ。