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現在、国内でこの新しい市場の規制を行なっているのは金融庁(FSA)である。金融庁とともに、仮想通貨、仮想通貨取引所、ICOの分野で活動する企業に対するルールと条件の策定に携わっているのが自己規制団体の日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)である。この協会は金融庁に登録されている16の仮想通貨取引所によって2018年3月末に設立された。
ブロックチェーンプラットフォームUniversaの設立者であるアレクサンドル・ボロディチ氏は次のように指摘する。「国は仮想通貨市場の成長を制限せず、この市場が持つ投資の将来性(編集注:投資から得られる利点)を利用しつつ、法的に管理している。」
仮想通貨
それ以降、膨大な数の店舗が仮想通貨決済を自社のインフラに組み込むようになった。例えば、高級自動車の輸入販売を手がける日本企業ロペライオは日本最大の仮想通貨取引所bitFlyerの技術支援を受け、ビットコインを決済方法に加えた。
このほか、2018年6月1日以降、日本人はビットコインを担保にローンを組むことができるようになった。このローンは新たなデジタル資産の取得を含め、あらゆる目的で組むことができる。さらに、仮想通貨の価値が上昇した場合、顧客はローン期間中でも担保に入っている仮想通貨を売却することができる。
2018年11月、ステーブルコイン(stable coinとは、価値が固定されたトークンのこと。通常、石油や金など、何らかの資産に連動させることで価値を固定する)を規制するルールが日本で発効した。日本の現行法上、金融庁はステーブルコインをデジタル通貨とは見なしていない。銀行のライセンスが無くても行えるステーブルコインのオペレーションは100万円までに限定され、この金額を超えるオペレーションは銀行のみが行うことができる。
現在、日本の仮想通貨取引所には登録手続きが必要である。このほか、仮想通貨取引所はJVCEAが策定した自己規制ルールを遵守しなければならない。そのルールにはインサイダー取引の禁止、Monero、Zcash、Dashなどの匿名仮想通貨(保有者情報が非公開のもの)のリスティング(取引所への上場)禁止などがある。
日本では仮想通貨取引所の活動は当局によって詳細にトレースされる。2018年2月、金融庁は32の仮想通貨取引所を検査し、初夏には認可取引所に対して業務改善命令を出した。検査では、取引所のオペレーターの内部管理システムに不十分な点が多数発見され、それを受けてマネーロンダリング防止策が策定された。
課税
現在、日本では仮想通貨の保有者は資産の増加分に対して15%から55%の税金を支払わなければならない。
また、現行法では、仮想通貨オペレーションによる所得が年間20万円を超える場合、日本国民はこれを申告しなければならない。
2018年10月末、日本の政府税制調査会はビットコインやその他の仮想通貨のオペレーションに対する納税の簡素化を決定した。なぜなら、多くの国民が手続きの煩雑さにより所得申告を行わないからである。新たな課税ルールはまだ採択されていない。
ICO(トークンの新規上場)の増加により、この分野の共通ルールを導入する必要性が議論されるようになった。しかし、最終的な規制は日本にはまだない。専門家らは「Call for Rule-making on ICO(ICOビジネス研究会 提言レポート)」が十分にその基盤となり得ると考えている。
このレポートには、資金分配ルールの開示のほか、投資家間の利益分配のルールの開示といった、ICO実施の基本に据えられるべき基本的原則が記されている。トークン保有者に影響を与えうる全ての条件は、発行前に予め明示されるべきである。
また、重要条項だと考えられるのが、投資家だけでなく発行体の本人確認を行う義務、仮想通貨取引所が上場基準について各社共通の適切なミニマムスタンダードを制定・採用する義務、不公正取引(例えば、インサイダー取引)の防止、サイバーセキュリティ対策の義務である。
総じて、日本の規制機関は簡単で分かりやすいルールを持つ進んだ仮想通貨市場を作り出すことに成功し、それにより日本は仮想通貨市場参加者にとって魅力的な国となっている。
本記事は次の仮想通貨市場の専門家のコメントをもとに執筆された。
ブロックチェーンプラットフォームUniversa設立者 アレクサンドル・ボロディチ
Tokenboxチーフアナリスト イーゴリ・ドガノフ
DeCenter.org(ブロックチェーンおよび仮想通貨に関するロシア最大のコミュニティ)代表 ロマン・アンドレエフ