「ビッグニュース期待したが何もなかった」沖縄県民投票が静かに終わった理由は?

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2月24日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を問う沖縄県民投票が行われた。県民投票が日本で行われたのは2回のみ。白熱ぶりから、結果のいかんによらず大きな出来事になることに疑いはなかった。だが投票当日、那覇市と宜野湾市の街なか、そして投票所で人並みはまばらだった。投票率は52.48%。有効性があるとみなされる投票率は超えたが、予想よりは低かった。スプートニクは現地住民と専門家からインタビューを取り、沖縄県民の無関心さの原因を尋ねた。

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「今日は休日ですから」

投票前日の23日、那覇市にある県庁前の広場では投票を呼びかけるイベント「2・24 県民投票キャラバンファイナル」が開かれた。アーティストが伝統衣装でコメディ劇を演じ、投票を呼びかけた。だが広場では観客よりも空席が目立った。出席したのは沖縄県の玉城デニー知事と数十人の県民だけだった。人混みの印象を作り上げたのは記者とボランティアからなる軍隊。ボランティアは関心を持つ県民がいない時、あからさまに退屈そうな記者らに選挙前の調査書を配布していた。

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沖縄県民投票 - Sputnik 日本
沖縄県民投票

翌24日、沖縄はさらに静けさを強めた。県庁前の広場からは県のシンボルを描いた旗が消え、突然現れた少数の活動家グループが全く閑散とした通りで活動していた。普天間基地付近と辺野古にもこの日、人々は見られなかった。「今日は休日で基地は閉まってるからね。ほら、誰もいない」と説明したのは那覇まで運転してくれたタクシーの運転手だ。沖縄の抗議活動は、仕事のようにきっちり月曜日から金曜日というスケジュールで行われるようだ。

「一般の人を喚起するのはとても難しい」

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「大阪から来ました。ここにはビッグニュースになるネタが起きていると思いましたが、結局、小さな出来事すら起きませんでしたね。」

ある米国人ジャーナリストは新基地建設反対県民投票連絡会事務所への道中でこう訴えた。連絡会事務所では沖縄の政治エリートが結果発表を待って集まっていた。

結果は予想通りだった。投票者の72.2%が辺野古移設に反対、19.1%が賛成、8.7%が「どちらでもない」だった。2014年と2017年の出口調査も同様の数字を示していた。だが問題が県民にとって非常に重要で、沖縄県の熱心な取り組みにもかかわらず、投票率は52.48%に留まった。

比較すると、1996年に行われた米軍基地縮小と日米地位協定見直しを問う県民投票の投票率は59.5%だった。その上、当時は「賛成」への投票率が記録的な91.3%だった。その他にも、1997年に行われた海上ヘリポート基地建設を問う名護市民投票では投票率は82.5%だった。

© Sputnik / Anastasia Fedotova米軍普天間飛行場
米軍普天間飛行場 - Sputnik 日本
米軍普天間飛行場

「これはどうしても『やれ』ということではないし、政府がしょっちゅう言うように法的拘束力はなくて、行こうと思わない人じゃないと行かないじゃない。現実を少しでもわかる人は行くんだけど、あまりその(基地の)存在に影響されずに生きている人もたくさんいるんですよ」と低い投票率の理由を説明したのは活動家のおおしろひろこさんだ。

おおしろさんは、沖縄の一般人は何か起きない間は軍事基地の危険性について深く考えないと指摘。そのため、急いで今投票しようとしないという認識を示した。

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「一度何かが起きたら、誰彼構わず大きな影響を受けてしまう。大きな影響というのは戦争が起きたら、まず基地のあるところが最初に標的にされることです。そこを本当はもっと考えてほしい。沖縄は常に戦争の最前線に立たされてきた。このことは過去を振り返ったらわかる。それでも身近にとても悪いことが起きない限り、普段の生活で一般の人はあまり考えない」

おおしろさんは、県民の説得に携わった人の1人だ。毎朝彼女は「反対にOを」と書かれた旗を持って外に出て、ただ通行人に手を振って「おはようございます」と見送っていた。おおしろさんは、これが仕事に急ぐ人の注目を集める最良の手段だと述べる。

「喚起するのはとても難しかった。あまり言いすぎるとかえって逆効果になるでしょう。それでも説得はしなければいけない。このあたりがとても苦しかったです」 

ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターの上級研究員でモスクワ市立教育大学外国語研究所日本語学科准教授、政治学士であるビクトル・クズメンコフ氏は、低い投票率が翁長雄志前知事の死に起因すると指摘した。

「沖縄県民が県民投票で活発ではなかった理由は、翁長前知事の死去で説明されると考えている。彼こそがはっきりと意思表示する立場を取り、米軍基地を県外に移設するよう要求していた。この出来事の真っ最中に翁長前知事は亡くなった。後継の玉城デニー知事は同様の見解を維持しているが、情熱が下がったことは明らかだ」

沖縄県民はこれに加え、クズメンコフ氏が見るところ、中国との対立を常に報じる日本メディアの影響下で妥協して、国の安全保障のためだと米軍基地設置の必要性を認めた。

おおしろさんも県民の低い関心について日本のマスコミに責任があると批判する。「日本(本土)の人たちに何を言っても、今はマスコミもストップされているし、現実を知らせないという政府の力がとても働いています。大手の新聞は政府の触手が働いているので、政府にとって都合の悪いことは知らせません。沖縄でこれだけ大きなことが起きていても小さな記事で済ませてしまう。だから普通の人には届かないんです」

おおしろさんが主張するところ、県民投票の結果を取り上げた時さえ、日本のテレビ局は問題の深刻さを弱めた。

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一方でロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長は、県民投票が無駄ではなかったという立場を取る。

「私が見るところ、投票率が50%超に終わり、法的効力を一切持たないとは言え、投票実施は無駄ではなかった。沖縄県民は何と言っても辺野古移設に反対する意見を表明する機会を得た」

新基地建設反対県民投票連絡会の高良鉄美共同代表は県民投票の結果に肯定的な認識を示した。

「最低投票率、どれくらい反対があるのか、どちらでもないという票がどうでるか、これをとても心配していたのですが、沖縄県民の意思がはっきり表れたことが改めて確認できました。私自身もそうですが、みんなの県民を信じている気持ちが出たのだと思います」

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日本政府は県民投票の結果を認めることを拒否している。だが2月24日、 県民の52.48%は手間もデモ行進もなしに初めて、この痛みを伴う問題に関する自分の意見を表明することができた。投票の翌25日、安倍晋三首相は、「結果を真摯(しんし)に受け止め」ると述べる一方で、普天間基地の辺野古への移転は先送りできないと計画を貫く姿勢を示した。

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