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「BarelyBears」は東京大学大学院・ 薬学系研究科修士2年で医薬政策学を専攻する吉原浩之さん、 東大理学系研究科修士2年で物理を専攻する大野巧作さん、 吉原さんの研究室の後輩で修士1年の前田直輝さんの3人で構成さ れている。
大会出場のきっかけは、サンクトペテルブルクに拠点を置くITコンサルティング会社「SAMI」の牧野寛社長の紹介だった。もともとロシアが好きで、ロシア関連のイベント開催などを手伝っていた吉原さんはすぐに参加を決め、大野さんと前田さんも快諾した。
モスクワにおける本選の戦いについて、東大チームは「シビアだった」と振り返る。課題が発表されてから修了まで36時間の耐久勝負。一般的なデータサイエンスのコンペはオンライン上で行われ、制限時間も月単位で与えられている。それに比べると36時間ノンストップというのは、吉原さんたちにとって長いような短いような、微妙な制限時間だった。
本選では、与えられた課題が3つあったため、「BarelyBears」はひとり1つの課題を担当するという戦略を立てた。序盤はすこぶる順調だった3人だが、終了直前のロシア人のラストスパートぶりに驚いたという。3人は本選を終えて次のように話してくれた。
「僕たちはスタートダッシュが速くて、最初の24時間くらいは常に2位のポジションをキープしていました。夜もほとんど寝ないで、どうやって1位のチームを倒すかを考えていました。終了2時間くらい前までは3位につけていたので、なんとか逃げ切れるんじゃないかな?と思ったら、最後の1時間で数チームが猛烈に追い上げてきて、みるみるスコアボードで自分達のチームが下がっていって…それを見ながら感情をなくしてましたね。僕たちは下手に徹夜してしまった分、力が足りず、悔しい部分はあります。最後の1時間は本当に、忘れられないような1時間でした。追い上げがすごくレベルの高い戦いでした。」
1位になったチームはなんと「ひとりチーム」だった。この大会では3人以内でチームを結成するというルールになっているため、1人でもチームとして出場できる。
吉原さんたちは「彼は、単独で全部の課題をやっているにも関わらず、最初から最後までずっとトップでした。ロシアにはとんでもないモンスターがいるなと(笑)思っていました」と驚きを隠さない。
首位の座を一度も譲らず、大差で優勝を決めたのは、イリヤ・イワニツキーさん。イワニツキーさんがプログラミングを始めたのは大学4年生のとき。現在はロシアの不用品販売サイト「Avito」社のデータサイエンティストとして活躍している。
本選で「BarelyBears」の次につけたのは、インドのチームだった。「IDAO」は今回が2回目という歴史の浅い大会ではあるが、参加者の出身国は78にものぼり、レベルの高さには定評がある。上位3位までをロシア勢が占めた中、日本代表が4位に入ったことは大変な快挙だ。
吉原さん「こんなレベルの高い大会に参加できて良かったです。自分自身、何かを代表するという経験は初めてで、雰囲気も含めて、全部が勉強になりました。将来はコンピューターサイエンス技術を医療分野に取り入れ、その技術を使って医療全体を向上させていくようなことをしていきたいと思います。」
前田さん「プログラミングを始めてまだ一年ですが、この大会に参加してみて、世界のレベルは本当に高いなと感じました。これからもっと勉強して、自分の専門分野に役立てていけたらと思います。」
3人は、更なるレベルアップを誓い「来年もチャレンジしたい」と話している。