世界中が、メルケル氏の健康状態について懸念をもって見守っている。メルケル氏は6月下旬だけでも、公衆の面前で2回、具合が悪くなった。
6月18日、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領とベルリンで面会した際、震えがメルケル氏を唐突におそった。その理由は暑さによる脱水だと説明された。メルケル氏が記者団と話したところによれば、水を飲んだ後、具合はずっと良くなったという。
しかし6月27日、フランク=ヴァルター・シュタインマイアー大統領との公務中にも震えが起きた。屋内での面会だったため、天候のせいということは考えられない。メルケル氏には水の入ったコップが差し出されたが、メルケル氏はジェスチャーで、コップを拒否し、一口も飲むことはなかった。
放っておけば治る?
メルケル氏を何度も震えがおそうことから、最初の震えの理由というのは間違いだろうと考えられている。最初の震えの理由はおそらく暑さのためではなかったし、震えの症状が出るのはメルケル氏だけではない。専門家らは、進んでいるように見えるメルケル氏の症状が、首相としてのキャリアを任期より前に終え、退陣させてしまうことになるのかどうか、予想している。メルケル氏自身は、健康状態に深刻な問題がないことを、大衆に信用させようとしている。ドイツのビルト詩は、「私は、震えが現れたときのように、勝手におさまると確信をもっているし、何か特別なことを言うことはできない。気分はよい」とメルケル氏の発言を紹介している。
年齢の影響?
伝説のF1ドライバー、ミハイル・シューマッハ氏の経過観察にあたったドイツの著名医、クリストフ・シュぺフト氏は、メルケル氏の症状の理由について6つの可能性を挙げた。
ビルト紙は、「加齢による変化、または立ちっぱなし、座りっぱなしの静的状態での震えは、60歳以降になると出てくる傾向にある。震えは、身体が動き出せば止まる」というシュぺフト氏の見解を紹介している。
精神的なストレス?
ドイツの新聞「Stuttgarter Zeitung」と「Stuttgarter Nachrichten」紙は、2回目の震えの原因は精神的なものだとする政府関係者の声を紹介している。「Sueddeutsche Zeitung」のサイトには「一度目の事態を思い出したことによって二度目が起こった。これは精神的なプロセスである」という政府関係者の声が掲載されている。
ジャーナリストのフランツ・ヨゼフ・ワグナー氏は「メルケル氏は弱さを見せるようになった」と考えている。
ワグナー氏は「この騒ぎは、首相が震えるなどあってはならない、というところから始まっている。首相が震えているということは、国家が震えているのだ。首相は完全に健康でなければならない。メルケル氏は夜明け前に起きて深夜まで会談をし、ほとんど寝ていない。我々の首相も、神経、血管、筋肉でできている。彼女にも心臓と心があるのだ」とビルド紙に書いている。
メルケル氏は2005年11月22日にドイツ首相に就任した。戦後、彼女より長く首相を務めたのは、コンラート・アデナウアー(14年間)とヘルムート・コール(16年間)のみ。二人とも、メルケル氏と同じく、キリスト教民主同盟党首を務めた。