雑誌「グローバル政治の中のロシア」編集長であるフョードル・ルキヤノフ氏はまず、日本は核兵器の被害を受けた唯一の国家として、核不拡散をテーマにした重要な声明を出す権利があると指摘している。しかしルキヤノフ氏はまた、現在、核保有大国をひとつの条約でまとめることは、可能性の低いことだという見解を示している。
ルキヤノフ氏「中国は、日本がこういった提案をする前から、軍備に制限をかけるような条約の類には一切参加しないということを何度も表明してきた。説明は簡単だ、中国にとって、現在の地政学的な状況では、軍縮は国益にかなわないからだ。」
軍事専門家で「軍事政治分析ビューロ」の編集長でもあるアレクサンドル・ミハイロフ氏も、ルキヤノフ氏と同様の見解を示している。
「INF全廃条約は核抑止として、きちんと役割を果たしたが、当時者である米ソ以外の国々が似たような軍備をしている今、全く建設的ではなく、益のないものになてしまっている。すでにイスラエル、インド、パキスタンなどを含む10以上の国家が、5000キロメートルを射程内に入れるミサイルを有している。日本の提案は興味深いものかもしれないが、それは、世界中の国防マーケットの参加者達が同じ話し合いのテーブルに着く場合に限られる。しかし、またもや中国は、国防分野に関しては、どんな条約にも入りたくないとの姿勢を示すだろう。」
ロシア戦略研究所の軍事専門家ウラジーミル・エフセーエフ氏は、それぞれの国が、INF全廃条約とは相容れない国防戦略を有していると指摘している。
「全ての世界のプレイヤーにはそれぞれの国益がある。例えばフランスは少しではあるが、中距離ミサイルを有している。なのでフランスとしてはこれを減らしたくはない。その場合フランスは核抑止力を失うことになる。中国はミサイルを有しており、それは米国を抑止するために必要なものだ。そしてイスラエルはイランを警戒している。」
米国は、米ソ間で締結されたINF全廃条約から、8月2日(金)に公式離脱する。