ウドムルトという名前に聞き覚えがないため、なんだかとても遠そうな感じがするが、ロシア的感覚で言えば、移動に問題はない。モスクワから共和国首都のイジェフスクまでは飛行機なら2時間弱。夜行列車でも一泊と、小旅行には最適である。イジェフスクからブラノヴォ村までは25キロと、やはり気軽に行ける距離だ。
ウドムルトの食文化、モスクワっ子は知らない「ペリペチ」
ウドムルト料理は、一般的なロシア料理とはだいぶ違っている。この日は、発酵キャベツとレバーを使った冷製スープ、ライ麦粉を使ったウドムルト風クレープ「タバニ」、アイスクリームがのったおかゆ、カワカマスのカツレツ、野生イノシシの肉、ヤギのミルクを使ったプリン風デザートなどがふるまわれた。ただ、これらのメニューはシェフのアレンジが加わっており、普段おばあちゃんたちが食べているのは、よりシンプルなものである。
おばあちゃんたちの生活は?教会内に老人ホーム
グループ最年少でリーダーを務めるのは、オリガ・トゥークトレワさん。オリガさんは、「奇跡が起きて私たちが有名になったことは、とても責任のあることだと考えています」と話す。もともとは、ブラノヴォ村の教会再建のためにステージに立つことを決めたおばあちゃんたちだったが、教会はほぼ再建され、教会併設の老人ホームまで開設する予定だ。村には一人暮らしの高齢者が多く、そういった施設の需要がとても高まっている。おばあちゃんたちの努力を見た行政当局も、道路や文化センターの建設を行なうなど側面支援している。オリガさんは「年齢に関わりなく、誰かに必要とされていることは素晴らしいことです。自分が必要な存在なのだと感じられれば、よりたくさん、より良いことをしたいという気持ちになります」と言う。
おばあちゃんたちはみんな、自然への特別な愛情を感じており、花や木、動物と会話を交わし、自然と共存している。そして有名人になっても、じゃがいもを植えたり、牛やヤギ、ニワトリなどを育てたりする自給自足の生活スタイルは変わらない。元ソフホーズの会計士だったアレフチーナ・べギシェワさんは「農作業が忙しくて、なかなか練習時間がとれません。全員で集まれるのは、新曲を練習するときや、イベントの前くらいです」と言う。
ウドムルト人の魅力とウドムルト語
おばあちゃんたちは「ユーロビジョン」で、ウドムルト語の曲を披露。ロシアが多民族国家であることを世界にアピールした。おばあちゃんたちの孫やひ孫は、学校ではロシア語を使って勉強しているが、家ではウドムルト語で会話している。しかしウドムルト語が消滅の危機にある言語であることには変わりない。
アレフチーナさんは「ユーロビジョンのおかげでウドムルト語に注目してもらえ、若者向けのディスコでも私たちの歌が流れているので、孫・ひ孫の世代はウドムルト語を覚えてくれています。その後は、彼らがどうやってウドムルト語を伝えてくれるのか、ですね」と話している。
ウドムルト共和国週間は8月5日まで続く。このイベントはロシア連邦観光局が支援する国家プロジェクト「ロシアの美食地図」の枠内で行われている。スプートニクは今後もウドムルトだけでなく、ロシアの地方都市や田舎の知られざる魅力と名物料理をご紹介していく。