Taiko in-Spirationのプロデューサーであるラリサ・バフテロワさんによると、始まりはまだ学校に通っていたころ。現在のリーダーであるアレクサンドラ・サモヒナさんと3人の有志がパロディ・ナンバーをやろうと決めたのが始まりだったという。「彼女たちは正しい腕の動かし方すら知りませんでした。当時、有名なパーカッショニストのオクサナ・モゼイチュクがモスクワで「和太鼓の演奏の基礎」というマスタークラスを開いていたので、彼女たちは軽い気持ちでそれに行くことにしたのです・・・」
太鼓との出会いはアレクサンドラ・サモヒナさんの運命を変えた。彼女は民族友好大学の文化学部に入学し、東洋文化を学び、「ポップ音楽の形成における太鼓団の役割」とうテーマで卒業論文を書いた。
ラリサ・バフテロワさんは言う。「太鼓は単なる趣味の域を超えました。しばらくして、私たちはドイツの太鼓メーカーKaiser Drumsを通じて本物の太鼓をひとつ手に入れました。けれど、練習は、最初のマスタークラスで学んだ技術を維持するために行う月に1回だけ。主にインターネットの動画を見て練習し、ときどき小さな演奏会を開いていました。けれど、男の子たちはスポーツに忙しく、リハーサルに定期的に来ることができませんでした。そこで新しいメンバーを募集しようということになったんです。」
ロシアの太鼓団を作るという考えはとても魅力的だったが、師匠もいなければ、経験もなかったとラリサ・バフテロワは語る。「多くの人が体験に来てくれました。大多数は演奏経験がなく、ましてや和太鼓なんて初めての人がほとんどでした。ゼロから教えなくてはなりませんでした。はじめから女の子たちの方が真面目で熱心でした。そうして女の子だけの団ができあがったんです。メンバーには、カザフスタン、ブリヤート共和国、カルムィク共和国の女の子たちがおり、それが団に東洋のカラーを加えています。」
現在、団員は15人。状況に応じて、全員で出演することも、交代で出演することもある。最初はひとつだった太鼓も数が増えて久しく、今やコンサート用の衣装も数多く揃えている。
アレクサンドラ・サモヒナは言う。「演奏レベルを上げるため、WPE(World Percussion Ensemble)のメンバーで著名な太鼓奏者の谷口卓也さんにマスタークラスを開いてもらいたいとアプローチしました。良い返事がもらえるとは、あまり期待していませんでした。最初は私たちのオファーに懐疑的だった谷口さんですが、実際にロシアに来て、私たちの演奏を見ると、私たちのやる気と、何でもすぐに覚える能力に驚いたそうです。谷口さんはヨーロッパで多くの公演やマスタークラスを行なっていますが、今は私たちのところにも来てくれるようになり、相談にのってもらったり、アドバイスをもらったりしています。彼が私たちに特に好意を抱いてくれていることは、例えば、私たちが彼の作品の演奏許可をもらったことが示しています。これは頻繁にあることではないんです。」
11月20日、Taiko in-Spirationは「青い森の海」というパフォーマンスの初演を行う。
Taiko in-Spirationのメンバーは、自分たちがロシアで精力的に普及させている文化の発祥の地である日本を訪れ、そこで公演し、日本の太鼓奏者に学び、もっと近くで日本文化に触れることを夢見ている。