可能性に富んだ日露宇宙協力 JAXAの鶴間氏が講演

© Sputnik / Eleonora ShumilovaJAXA第一宇宙技術部門参事の鶴間 陽世氏
JAXA第一宇宙技術部門参事の鶴間 陽世氏 - Sputnik 日本
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7日、東京で日ロ交流協会の主催で「日本とロシアの宇宙開発」と題し、JAXA第一宇宙技術部門参事の鶴間 陽世氏を講師にした講演会が組織された。鶴間氏は、日本の宇宙開発をリードしてきた JAXA の責任者としてロシアや米国の研究・開発状況を熟知される存在。講演では日露宇宙協力の実際の状況と将来性が語られた。

日露宇宙協力の現状は?

日露の宇宙協力は1990年12月2日、日本人ジャーナリストの秋山 豊寛 さんがソ連の宇宙船「ソユーズ ТМ-11」»にのって当時の宇宙ステーション「ミール」に滞在したことで端緒が開かれた。以来、すでに11人の日本人宇宙飛行士が宇宙空間から「ペイル・ブルー・ドット(地球)」をのぞんでおり、こうした協力は常時行われるようになっている。ではこの間、ロシアと日本は宇宙の別の分野での協力合意には達していないのだろうか。

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「日露の宇宙協力は、ソユーズ後、日本人宇宙飛行士がロシアの機関で訓練を受けるという人材交流です。技術交流の進み具合は非常に注目されてはいますが、実はあまり何もない状況です。」鶴間氏は残念そうにこう語る。

日露の宇宙局の間の協力として鶴間氏が挙げたのは光通信の衛星OICETS(きらり)。 「きらり」はロシア製のロケットで打ち上げられた。当時の日本には、この衛星OICETS(きらり)を打ち上げる日本のロケットの「空き」がなかったので、ロシアも手頃な価格でサービスを提供できたのが理由だったが、現在はこうした実践はもう行われていない。

「それと共に、日本の民間企業による人工衛星の打ち上げには、(日本や欧米ではなく)ロシアのロケットを使用しているケースもある。または、民間企業の商業活動として、地球観測データの販売をロシアで行っていることもある」と鶴間氏が語っている。

ステーションにおける共同実験では、鶴間氏のお話では日露の間では次のような作業が行われている。

「今、宇宙ステーションの実験の中で残っているのはタンパク質の実験です。このための素材をソユーズで無料に運搬してもらう引き換えに、『ロシアも実験をしてもいいですよ』と約束をして、宇宙ステーションで共同実験が行われています。」

© 鶴間 陽世鶴間氏のプレゼンテーション
可能性に富んだ日露宇宙協力 JAXAの鶴間氏が講演 - Sputnik 日本
鶴間氏のプレゼンテーション

「なかなか噛み合わない」 日露宇宙協力が進まない理由とは

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鶴間氏は2014-2018年、JAXAモスクワ技術調整事務所長を務めた経験から、両国の宇宙局間が相互に満足する協力内容を見つけるのはそう容易な話ではないと指摘している。

「ロシア側は『ロシア製ロケットで衛星の打ち上げますよ』とか、『ロケットをこれだけ作れますから、買いませんか』とか、『日本にないメタンエンジンのロケットを共同開発しませんか』という提案を下さる。でもロケット、衛星の売り込みなら、日本側だってしたい。それでなかなか噛み合わない。日本は対等なパートナーでいたいので、衛星、部品や有人技術など、単純な買い物は多少遠慮したいところです。」

いくら宇宙空間は政治やその他の制限の絡まない分野だといっても、特有の事情は存在する。鶴間氏はその説明として、方向性によっては露日の協力実現に米国という要因が否定的に影響する例を引いた。

「衛星をロシアで打ち上げる場合、様々な問題が生じます。人工衛星の製造には米国製の部品が多く使用されますが、そうして出来た衛星を日本以外の国で打ち上げる場合、米国の許可が必要で、それがもらえない恐れもあるのです。一方でヨーロッパには最初から『米国製の部品を使用しない衛星を作ろう」という考え方があるため、そうした問題が回避できます。」

それでも日露宇宙協力の展望はあるのか

8月29日、ロスコスモス社のドミトリー・ロゴージンCEOから日本企業に対し、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングシステム、ロボット工学の分野での協力が提案された。鶴間氏によれば、協力の内容はまだ具体化されておらず、今後の話し合いが要される。それでも鶴間氏は提案をポジティブに受け止めており、この分野での協力が進めば、宇宙における日露関係を新たなレベルに押し上げることができると評価している。

「ロシアはドッキングシステムで大きな経験を有しています。これを日露が共同で開発できたら、月へ行こう、火星へ飛ぼうという場合に共同開発のドッキングシステムを使用することができ、大変いい協力になるでしょう。」

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鶴間氏は、熟考すれば日露の協力の潜在的可能性は多々あり、少なくとも緊急事態に互いを補完しあうシステムの構築を開始すべきだとの考えを示している。

「例えば、種子島でロシア製ロケットが、また日本製ロケットがボストチヌイで打ち上げられる可能性があれば良いと思います。互換性あれば、どちらかの発射場で事故が発生したり、いずれかのロケットが使えない時、協力ができるからです。事故が起きる前にそういう協力体制を作ることは非常に大事です。」

鶴間氏はまた、ロシアの「マース500」(MARS500)プロジェクトに注目している。鶴間氏はこれにJAXAが大きな関心を寄せていると語っている。

「『マース500』は、5~6人が1週間、100日、500日と長期滞在ができる地上の閉鎖環境設備です。狭い環境で男性のみ、女性のみ、または混成のチーム、多国籍チームとか色んなケースに分かれ、シミュレーションが行われています。JAXAとしてはそれに是非と参加したい。月や火星で暮らすにはどういう家具や食べ物が最適か、日本でも民間企業から続々と提案が出されており、そういう人たちと一緒に計画に協力したいです。」

宇宙での協力を進めるためにソフトパワーも?

日露の宇宙協力は何も公的レベルでの合意を増やすことだけではない。鶴間氏は、ソフトパワーだってうまく使うことができるとこんな提案をしている。

「バイコヌールでは、宿泊を指定されるのは常にヨーロッパ系のホテルです。ボストチヌイに日本系のホテルを建てて、一大観光地にしてはどうでしょう。そういう話は冗談としてホテルの方に言っていますが。」

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