ごく最近に発射された北朝鮮のミサイルは、日本にも韓国にも、発射場所や発射数について疑念を呼び起こした。これらの場所や数の問題は、北朝鮮の核ミサイル分野における技術的な可能性を測るのに非常に重要である。
韓国の軍事当局は、発射されたのは一発だとし、日本の専門家らも、ミサイルは単に分離したと考えている。そのために当初は正確な発射数について疑いがもたれていた。発射場所も分析の対象になった。後に聯合ニュースが米中央軍報道官のパトリック・ライダー氏の発言を引用し、北朝鮮はミサイルを潜水艦からではなく、海をベースにしたプラットフォームから発射したのだろうと伝えている。
韓国・慶南大学極東問題研究所の教授で軍事専門家である金東葉氏は、北朝鮮が発射したミサイルは2000キロの射程をもっており、水中戦略弾道弾「北極星(プッキクソン)」の発展形であると述べている。
この重要性についてスプートニクは、軍事評論家で防空軍博物館の館長、ユーリー・クヌトフ氏に見解を求めた。
「ミサイル発射場所はこの場合非常に重要である。もしも、結果として、実はやはり二発のミサイルを水中から発射していたということが明らかになったとしたら、北朝鮮は新しいミサイル技術を有しているということになる。北朝鮮は一斉に、つまり同時に、2発とは限らず複数のミサイルを発射できるということだ。しかしやはりミサイルが1発で、途中で分離したということなら、何も新しいことはない。今回のミサイル発射が危険なのは、ミサイルあるいはその一部が日本の排他的経済水域に落ちたということだ。これでは状況は自動的に戦争状態に近づいてしまう。」
北朝鮮の金委員長は、まるで見せ付けるように新ミサイルの実験を行なっているが、これは来るべきトランプ米大統領との会談に備えて、追加の交渉材料を持っておきたいからだ、とクヌトフ氏は指摘する。クヌトフ氏は、北朝鮮は、ミサイルを撃てば撃つほど、交渉が成功する可能性は高くなり、北朝鮮にとってミサイル開発プログラム凍結と引き換えに有利な条件を引き出せると思っている、と考えている。
「北朝鮮は今、あまり具体的な交渉に向けて急いではいない。北朝鮮にとってそれは有利ではない。なぜならトランプ氏の運命が定かではないからだ。民主党員たちは、もし2020年の選挙で自分達が勝てば、トランプ氏が外交でやってきたことを全て反故にするだろう。もちろん北朝鮮政策もだ。北朝鮮と合意したこと、譲ったことについては、忘れられることになる。なので、北朝鮮としては、ミサイル開発プログラムの凍結を、なかったことにするために、米国との会談において逃げ道を作るだろう。トランプ氏が弾劾されてお終い、となるのではなく、新しいホワイトハウスのリーダーと協議ができるようにだ。」
米朝の対話は、その結果に関わらず、米国と北朝鮮、それぞれのリーダーのイメージ構築に貢献しているとジェビン氏は指摘する。
「米朝対話のトラックは、両者にとって有利である間は、機能していく。以前、北朝鮮は、米国のおもな要求を呑んだ。米国領土にまで到達するような大陸間弾道ミサイル実験をしない、ということだ。そして北朝鮮はトランプ氏に、米国民に対して、公約を守った、北朝鮮のミサイルが米国の都市に向けられることはない、と発言するのを可能にしたのだ。トランプ氏はどうも、その対価として、北朝鮮が中短距離のミサイル実験をするのに目をつぶっているようだ。まるで、その引きかえに、何も受け取っていないようなふりをしながら。」
「北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域に落ちたということだけではなく、安倍首相は、トランプ氏と金氏の対話プロセスから追いやられてしまっているからだ。金氏は、この15か月間の間で、中国、米国、日本、そして韓国の首脳と、対話をしたければ、することができた。しかし日本だけが、このプロセスから外交的に孤立している。これはもちろん、日本のリーダーとしても、この地域の責任ある国際的なプレーヤーとしても、安倍氏の権威に傷をつけるものだ。北朝鮮は、安倍氏が、条件無しで会うと言っているのに、その呼びかけを無視している。日本は、建設的に対話ができる時期を逃してしまった。北朝鮮は、既成事実として、すでに核ミサイル大国となってしまい、今日では、日本と接するにあたっても、15年前のポジションとは、全く違った立ち位置で接しているのだ。」